釣りには釣り糸が必要不可欠で釣り糸がないと釣り自体が成り立ちません。しかし釣り糸には種類が多く、どの釣り糸を選んでよいか悩むことが多いことでしょう。実際の釣りでは適切に釣り糸を選ぶと釣果のアップにつながります。
ここでは釣り糸の素材(合成繊維)により釣り糸を大きく3種類にわけ、それぞれの特徴や違い、メリットデメリット、そして選び方とよくある質問と回答などをお伝えします。釣り糸に詳しくなり釣果をあげることで釣りを楽しんでみてください。
釣り糸の素材はどんな種類がある?それぞれの特徴と違い
釣り糸を使い分けるには、まず釣り糸の素材を知ることが大切です。釣具店やインターネット通販で流通している釣り糸の素材の違いにより、大きく分けて次の3つの種類があります。釣具店の棚やインターネット通販でも、主に3つの種類の品わけを見かけることが多いです。
主な釣り糸の種類
- ナイロン
- フロロカーボン
- PE(ポリエチレン)
釣り糸の素材は、市場で普及してきた順に、ナイロン、フロロカーボン、PE(ポリエチレン)の3つの種類があります。それぞれの特徴や違い、そしてメリット・デメリットなどをお伝えします。
また3つの素材を比較してみると釣り糸の素材の理解が深まることでしょう。
ナイロン|しなやかで伸びがある
ナイロンの特徴
我が国の釣り糸で最初に普及したのがナイロン素材で、東レの「銀輪」という商品が日本初のナイロン素材の釣り糸です。釣り糸「銀輪」は発売から約70年以上経っても改良を続け現在も販売されており釣具店やインターネットで見かけることがあります。
そもそもナイロンは世界で初の化学繊維であり、天然素材より耐久性に優れていたため、衣類やバッグに利用されるようになりました。そこで、それまで天然素材であった釣り糸にもナイロンの素材が利用されるようになりました。
ナイロンのメリット
ナイロンが普及する以前の釣り糸は植物の繊維を編み込んだ糸を利用していたようです。まずナイロンは綿などの植物の繊維より強度や耐摩耗性があり、植物の繊維の約10倍以上の強度や耐摩耗性などのメリットがあります。
またナイロンには吸水性があるため釣りをしていても水への馴染みがよく、また伸びがあるなどの理由で扱いやすいのがメリットです。さらにナイロンは普及品も多く価格が安いため入手しやすいメリットがあります。
ナイロンのデメリット
ナイロンのメリットとして吸水性をお伝えしましたが、吸水性がある素材のため劣化しやすいというデメリットがあります。劣化しやすいと魚が釣れた際、釣り糸が切れる可能性が高くなり、せっかく釣れた魚を逃がしてしまうかもしれません。
また劣化しやすい特徴により、使用する状況によっては新品に取り替えなければならない可能性があります。安価なナイロン素材であっても新品と取り替える頻度が増えれば割高となるかもしれません。
フロロカーボン|傷に強く伸びにくい
フロロカーボンの特徴
ナイロン素材の釣り糸は東レが開発しましたが、フロロカーボンの素材はクレハ化学が開発しました。商品名は「シーガー」で世界初のフロロカーボン素材でナイロン素材より強い釣り糸として発売されました。
「シーガー」が普及するにつれ他の釣り糸メーカーもフロロカーボン素材の釣り糸を開発し販売しています。いずれもナイロン素材より傷に強く伸びにくい特徴があることを商品のアプローチとしているようです。
フロロカーボンのメリット
フロロカーボンはナイロンと比べて傷に強いというメリットがあります。「シーガー」が利用されるようになった頃は、ナイロン素材で釣りあげることのできなかった魚を釣りあげることができたと話題になったものです。
またフロロカーボンは伸びにくく、さらに水中で見えにくいというメリットがあります。水中で見えにくいと魚からも気づきにくくなり、警戒心の強い魚に対して効果がある素材といえるでしょう。
フロロカーボンのデメリット
フロロカーボンの素材は硬くてごわごわしている素材であることがデメリットです。後に説明しますが、道糸としてフロロカーボンを利用するとリールに糸を巻いた際、リールから糸がほぐれてしまい釣り糸を巻き取りにくくなってしまいます。
フロロカーボンはナイロン素材より強いというメリットがありますが、その分価格が高くなるデメリットがあります。フロロカーボンを製造する際は複雑な工程を経る必要があるため、どうしても価格が高めとなってしまうようです。
PE(ポリエチレン)|強度があり伸びない
PE(ポリエチレン)の特徴
釣り糸がナイロン、フロロカーボンと進化するにつれ、化学繊維を編み込んだPE(ポリエチレン)素材の釣り糸が開発されました。YGKの開発した「四つ編み」が最初となり、複数の糸を編み込んでいるのが特徴です。
PE(ポリエチレン)は、より糸の編み数により、4本編、8本編、さらに12本編などの釣り糸が市販されています。より数が大きくなるほど釣り糸がしなやかになり強度も増します。
PE(ポリエチレン)のメリット
複数の糸を編み込んでいるため、まっすぐ引っ張った際の強度の高さがメリットです。同じ太さの他の釣り糸より強さが増しているため、より細い釣り糸を利用できます。釣りでは狙う魚までの距離が遠い場合もあり、飛距離が必要な釣りではPE(ポリエチレン)の釣り糸が重宝することでしょう。
また伸びない素材のため魚のアタリを高感度でとらえることができるメリットがあります。状況によっては魚が釣り針をつついている振動などを確実にとらえることができます。
PE(ポリエチレン)のデメリット
デメリットとしてはスレや傷に弱いことがあげられます。複数の糸をよっているためまっすぐ引っ張った時の強度はあるものの、横からの傷で1本のより糸に傷が入ると、全体としてのバランスがくずれ、他のより糸が切れてしまう可能性があります。
またPE(ポリエチレン)はナイロンやフロロカーボンなどの素材と比べ比重が軽いため、水に沈みにくく風にあおられやすいことがデメリットです。水の流れや風などが強いと仕掛けが不自然に流れてしまいます。
さらに、4本編、8本編、12本編と、より数が増えるごとに高額となるのがデメリットです。
その他の釣り糸素材まとめ
釣り糸の素材として、ナイロン、フロロカーボン、PE(ポリエチレン)の3つをご紹介しましたが、最近では3つの素材のほか新しい素材が開発されています。それぞれの素材のメリットを合わせ持つ商品が発売されているのでご紹介します。
・カーボナイロン(CN):ナイロンとフロロカーボンの組み合わせ
デュエルの開発したカーボナイロン(CN)は、ナイロンの操作性とフロロカーボンの強さをあわせもつハイブリッドな新素材です。
ナイロンはもちろんフロロカーボンの素材と比べ耐久性が約50%アップしています。
・アーマード(Armored):フロロカーボンとPE(ポリエチレン)の組み合わせ
デュエルの開発したアーマード(Armored)は、フロロカーボンの強さとPE(ポリエチレン)のしなやかさを併せ持つハイブリッド素材です。
釣り糸に比重があるため、まっすぐ飛ばせる特徴があります。またフロロカーボンの釣り糸への傷への強さの特徴も合わせ持っています。
・SHIN-SAYA(新鞘):ナイロンとポリエチレンの組み合わせ
ユニチカの開発したSHIN-SAYA(新鞘)は、ナイロンと、PE(ポリエチレン)の材料であるエチレンのハイブリッド新素材です。ナイロンの中にエチレンの芯を入れた構造となっており、アタリのとりやすさや耐摩耗性の優れた素材となっています。
道糸とハリスの違いって?
釣り糸を素材により3種類お伝えしましたが、釣り糸は用途により「道糸」と「ハリス」の2つに分けることができます。「道糸」と「ハリス」の役割が分かると釣り糸を選びやすくなるため、「道糸」と「ハリス」の違いをご紹介します。
「道糸」とは、そもそも釣り竿から鉛までの間の釣り糸のことを指しています。リールを使う釣りではリールに巻く糸をいい、リールを使わない1本釣りでは釣り竿につなぐ釣り糸が「道糸」です。
「ハリス」とは、鉛から下の針を結ぶ釣り糸のことをいいます。「ハリス」は通常「道糸」より強度を弱くし、釣りの仕掛けが「道糸」から切れないようにします。しかし釣り魚によっては「ハリス」を「道糸」より強くする仕掛けもあるようです。
釣り糸はどう選べばいい?注目したい3つのポイント
釣り糸は釣りの結果を左右する大きな要素の一つです。ナイロン、フロロカーボン、PE(ポリエチレン)の3つの素材と、それらを組み合わせた新素材をご紹介しましたが、釣りの際は適切に釣り糸を選ぶ必要があります。
釣り糸を状況に応じて選定し使い分けると釣果アップにつながります。そのため釣りの状況に適した釣り糸を正しく選び、いくつか準備しておくと、より釣りを楽しめることでしょう。ここでは釣り糸の選び方を3つご紹介します。
釣りたい魚による違いは?何種類くらい持っておくべき?
釣り糸は釣りたい魚に合わせて使い分ける必要があります。まず釣りをするシチュエーションを想定し、釣り糸を選んでいきます。
例えば池や湖でブラックバスを狙う際は、使うルアーの種類により釣り糸とリール、さらに釣り竿などを選びます。
釣り人により使うルアーが異なるため、1種類~数種類の釣り糸を持っているようです。また投げ釣りでは飛距離に応じて道糸を使い分けるため、やはり数種類の釣り糸を持っているようです。
釣り座の移動が少ない船釣りでは1種類の釣り糸ですますこともありますが、実際は予備を含めて2~3種類の釣り糸を準備しておくことが多いのではないでしょうか。
いずれにしても釣りたい魚や釣り方により釣り糸を変える必要がありますが、どの釣り方でも数種類の釣り糸を持っていることが多いです。
太さはどうする?基本は何号?
釣り糸の太さも釣りたい魚と釣り方によって使い分けます。例えばクロダイを堤防で釣る場合、道糸を2号以下とし繊細な釣りを楽しみます。同じクロダイでも沈み瀬や障害物が多い際、3号以上の道糸を使うこともあります。
渓流釣りでは警戒心の強い魚に違和感を与えないよう、1号以下の太さを使うこともあります。シーバスを汽水域で狙うルアーで狙う場合、PE(ポリエチレン)1号~1.5号とし、さらに補強する糸(リーダー)をつなぎます。リーダーはフロロカーボンを使用しPE(ポリエチレン)の傷への弱さを補填するのが特徴です。
このように状況にもよりますが釣り魚に応じて釣り糸の太さは概ね決まっています。いずれにしても釣り糸の太さは釣り魚に合わせて細くできる限界の手前あたりで決めることが多く、操作性などの理由により不必要に太くする必要はありません。
釣り糸の長さはどうする?道糸とハリスは何メートル?
釣り糸の長さについても何メートル必要か悩むことがあるでしょう。道糸は釣りに必要なギリギリの長さではなく、道糸に傷が入り切り捨てる必要が生じた場合など考えて少し長めにしておきます。釣り糸の長さについてお伝えしますので参考にしてみてください。
道糸とハリスが同じ1本の糸である1本釣りを想定した際、1本の糸が竿の長さ分だけあれば大丈夫です。その場合も、魚が釣れた後で仕掛けを交換する際は、交換する回数分は釣り糸が必要になります。
ハリスは長くて竿1本位必要なときがあるため5mは必要で、ハリスの劣化や傷などにより、複数回の交換を考えると約50メートル必要です。なお釣行の前には道糸やハリスが何メートル位必要で手持ちが何メートルあるか確認しておくことをおすすめします。
釣り糸の種類に関するよくある質問まとめ
釣り糸の3種類の素材と新素材、そして選び方など概ねですがご紹介させて頂きました。釣り糸を知るには、まず素材から入り、その素材の生い立ちを知っておくと、釣り糸を選ぶ際のヒントになるといえましょう。
しかし釣り糸については、疑問が生じることも多く、疑問のあるままですと釣り糸を楽しんで選ぶことが難しくなるかもしれません。ここでは釣り糸のありがちな疑問を3つご紹介し、それぞれにお答えしています。
- 釣り糸の太さに基準はありますか?
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日本で初めて釣り糸でナイロンの素材を開発した東レの「銀輪」から釣り糸の太さの基準がスタートしました。釣り糸の素材である、ナイロン、フロロカーボン、PE(ポリエチレン)、そして新素材も「銀輪」から釣り糸の太さが基準になっています。
現在では一般社団法人「JFTMA(日本釣り用品工業会)」による「ナイロン糸・フロロカーボン糸・ポリエステル糸の標準直径」「PE系の標準直径」などの標準規格があり、加入している各メーカーがこの基準により釣り糸の太さを決めているようです。
- 釣り糸の手入れの方法は種類によって違いがありますか?
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釣り糸の手入れの方法は、どの種類にしても塩抜きや汚れをとるため、真水で洗浄し乾燥させることが大切です。特にPE(ポリエチレン)は編み糸の中に塩分や汚れが染み込みやすいので釣行の度に洗浄・乾燥の手入れが必要です。
ナイロンやフロロカーボンなどは傷を目視で確認できるので、傷から先の部分を切り捨てます。PE(ポリエチレン)は編み糸が細いと目視で見つけにくいため、指の感触で判断します。
どの素材でも洗浄・乾燥の後、市販の釣り糸保護剤を使えば手入れは万全です。
- 釣り糸を交換するタイミングについて種類による違いを教えてください。
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釣り糸は消耗品のため交換が必要です。釣りのフィールドや釣り糸によって交換のタイミングが異なりますが、概ねの目安を釣り糸の素材ごとに回答します。
ナイロンは吸水性と伸びがあるため劣化は早いといえます。概ね1ヶ月を目安にしてはいかがでしょうか。
フロロカーボンには硬め、柔らかめなどの釣り糸が市販されています。繰り返し使うというより、釣りをしながら少しずつ切り捨てていきます。フロロカーボンは使うたびに色が濁ってくる特徴があり、色が濁ってきたら交換します。概ね4回の釣行で交換することをおすすめします。
PE(ポリエチレン)の交換基準は各メーカーではっきりとなされていない現状があります。メンテナンスが行き届いていれば数ヶ月は交換不要な場合があります。
まとめ
ここでは釣り糸の素材をナイロン、フロロカーボン、PE(ポリエチレン)の3つの種類に分け、さらに新素材についても、それぞれの特徴と違いをお伝えしました。釣り糸は、釣り糸初の合成繊維であるナイロンから数十年かけて進化し続いています。
釣り糸の太さの基準は一定していますが、新しい素材の開発により、今までにない強さやしなやかさを持つ釣り糸が生まれることも考えられます。まずは3種類の素材の特徴を押さえ、これからの素材に期待しつつ釣りを楽しまれてはいかがでしょうか。
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