身近な場所で楽しめる「キス釣り」。日本の一部を除く沿岸部に生息し、夏場に釣りのピークを迎えます。また、手軽な仕掛けで容易に狙え、食味も良いことから「キス釣り」は釣り初心者にもおすすめです。
ここでは、キスの生態や特徴、そして生息地などを解説します。また、釣り方として投げ釣りや、和食の揚げ物として人気の「キスの天ぷら」など料理方法などにも触れ、解説しますので参考にしてみてください。
キスってどんな魚?生態や特徴
分類:スズキ目キス科
通常、キス釣りで狙えるキスは、大型のもので35cmほどになる「シロギス」をいいます。魚体は細長く、やや固めのうろこでおおわれ、腹部の白いのが特徴です。背側は薄い褐色で、腹側は白っぽい色をしています。
大きさは20cm~30cmほどがキス釣りの対象となり、細長い体形で魚体に光が当たると虹色に反射します。そのため、「なぎさの貴婦人」「海の貴公子」「海の女王」などと形容されるのが特徴です。
キスは砂底の餌を探し食する習性があるため、口は下向きで細長い形状になっています。餌を探す際は、砂に潜ることもあり、産卵期は夏から晩秋とされています。冬場は越冬のため深場に落ちるのが定説のようです。
キスは昼行性の底生魚
キスは日中に活動する昼行性の魚です。早朝や夕方には砂浜の岸近くを回遊することがありますが、夜間は砂に潜っています。しかし、夜間に砂の中へ潜らないキスもいるようで、キスの暮らす環境により異なるようです。
キスは水底に小さな群れをいくつか作り、群れ毎に餌を探して移動します。泳ぐ速さはとても早く、砂浜でキスをみつけても、あっという間に見失うほどです。
砂浜の海水浴場では、夏場にキスを見つけることもあるので、幸運にもキスを見つけた場合は、泳層や泳ぐ速さを観察してみてください。
キスの雑学~脚立釣りとブランドキス
江戸時代の東京湾では、海に脚立を立て、脚立の上から釣りをする「脚立釣り」の光景が見られたそうです。
魚の警戒心を少なくした釣り方で、当時は大漁になったとの話もあります。現在では、「脚立釣り」を見かけることはありませんが、江戸時代の釣りの想像をかきたてることでしょう。
福山大学はキスの養殖技術を研究し、養殖キスの販売を開始するようです。
天然のキスは冬場に漁獲高が少なくなるものの、養殖キスは安定して供給でき「びんごの姫」と名づけられました。ブランドキス「びんごの姫」を目にする機会が増えることでしょう。
キスの生息地は?日本では釣れる?
キスは、北海道や沖縄県を除き、日本各地の沿岸部に生息しています。このように、キスは幅広く生息しているため、各地で釣りを楽しむことができます。キスは海水魚ですが、河口部にも入り込むため、比較的狙いやすい魚といえます。
キスには大きく分けて4種類があり、通常、キス釣りで狙え各地に生息する「シロギス」、かつて東京湾に生息していたものの現在は九州の一部地域や台湾に生息する「アオギス」、奄美大島に生息する「ホシギス」、オーストラリアに生息する「ダイオウギス」などがキスの主な種類です。
「シロギス」は朝鮮半島から台湾にも生息すると言われ、食用として海外でも捕獲されているようです。日本では、夏場が釣りのピークとなり、手軽に狙えることから、キス釣りはとても人気があります。
キス釣りの方法や仕掛け方法
キスを釣りで狙う場合は、生態や特徴に合わせて、釣り場や仕掛けを選びます。冬は深場に落ち、魚の活性もさがるため、春〜秋の季節の釣行をおすすめします。また、昼行性の魚のため、早朝〜夕方にかけて狙うと良いでしょう。
キスは砂地の底を回遊するため、投釣りで餌を底にはわせて狙うのが適しています。そこで、投釣りの仕掛け方法を解説します。竿は2〜3m位の長さが使いやすく、投げ竿やシーバスロッド、エギングロッドでもキス釣りを楽しめます。ただし、キスは小さな口で餌を吸いこむため、穂先はなるべく柔らかい竿を選びます。
リールは3000番クラスをセットしますが、小型に投げ専用リールであれば遠投も可能です。リールには道糸3号位、PEでは1号以下のラインを100m程巻きます。
投げ専用のリールには150m以上巻く場合があります。オモリは15号を標準にし、広範囲を探る場合は、オモリを大きめに変更します。
ハリスは1.5号前後、針はキス釣りに向いている流線の6号を中心に、キスの活性に合せてサイズを変更すると良いでしょう。
キスの活性が低い場合は、サイズを小さくし、キスが20cmを超える場合は、針のサイズを大きくします。餌はイソメの1匹掛けに加え、ワームで釣ることができます。
投げ釣りの仕掛けを投入した後は、キスの群れが回遊し餌を口にするのを待ちます。待ちの釣りになるため、仕掛けは3本ほど投じていると効率が良いです。
なお、手持ちの釣りとして、少しずつ竿で仕掛けを引き寄せ、アタリがなければ、さらに引き寄せる釣り方もあります。引き寄せる際の餌の動きや、砂煙にキスが反応し、食いがよくなると考えられます。
キスの味や調理法
キスの身は透き通るような白身で、柔らかい肉質が特徴です。そのため、キスをさばく際は、身をつぶさないように力を入れすぎずに包丁を入れるようにします。魚体は細長いため、小型の包丁を使うと良いでしょう。
キスはたんぱくな味わいで、臭みやクセもなく、ほんのりとした甘味があります。そのため、どのような料理にも合いますが、たんぱくな味わいを生かしたシンプルな料理がおすすめです。
ここでは、キスの天ぷら、刺身、塩焼きなど素材を生かした料理をお伝えします。
キスの刺身
新鮮で20cmを超える大型のキスは、刺身もおすすめです。美しい透き通った身からは、ほんのりとした甘味を感じることができます。通常、入手できる市販の刺身とは異なる上品な味わいを楽しめるのは、釣り人の特権ともいえるでしょう。
大型のキスが釣れ、刺身にする場合、まず、きちんと下処理が大切です。うろことワタをとり、水気を切ったキスを3枚におろします。腹骨をすいた後、身を斜めに切ると大きめの刺身を取ることができます。
また、キスの生食として寿司もおすすめです。すし飯を作るのは難しく感じますが、自宅で握り寿司を作る場合は、市販のすし酢を使うと難しくありません。分量通りの寿司酢をつくれば、あとは細長く切ったキスの切り身を乗せるだけです。
キスの天ぷら
キスの料理で知られているのが「キスの天ぷら」です。揚げたての天ぷらはサクサクした衣に、ふわっとした食感のため、とても人気があります。和食店の天ぷらセットを注文した際、キスの天ぷらが入っていることを経験した方も多いのではないでしょうか。
まず、うろことワタをとったキスの頭を落とし、背中から包丁を入れ背開きにします。中骨は包丁ですくうように取り除いてください。水で解いた小麦粉に背開きにしたキスを付け、カラッと揚げます。余熱でも火が通るため、揚げすぎないのがコツです。
キスの天ぷらが出来上がったら、温めた天つゆか、好みによりレモン汁をかけ塩で頂くのも良いでしょう。なお、天ぷらを作る際は、小麦粉をとく水は冷やしておき、少しだまが残る位に小麦粉を冷水でとくのがコツです。
キスの塩焼き
キスの身は柔らかく、少々水気もありますが、焼き物にし水分を飛ばすと味が凝縮され美味です。塩焼きにする際は、下処理したキスを丸ごと一匹に塩をふり、火力に注意しながらゆっくりと焼きます。身が崩れやすいため、ソフトに身を返すのがコツです。
柔らかいキスは、半日ほど干して半生の干物にし、さっと火であぶると美味です。魚が大きい場合は、頭を付けたまま背開きにしても良いでしょう。約11%程の食塩水を作り、キスを漬け込み干し網などで干します。半乾きになれば完成ですので、干し網から取り込み冷蔵庫で保管します。
キスの焼き物として、たんぱくな味を生かしたムニエルもおすすめです。背開きにし骨を取り除いたキスに小麦粉をまぶし、中火のフライパンで程よく焼き目がつくまで加熱します。ふわふわとした食感は、やみつきになるかもしれません。
まとめ
本記事では、夏場の釣りとして人気の高い「キス釣り」について、キスの習性や特徴、さらに、キスの雑学として「脚立釣り」、ブランドキスとして期待される「びんごの姫」などをご紹介しました。
キス釣りでは、砂地の底を群れで回遊するキスの習性に合わせ、投げ釣りで狙うと釣果を楽しめます。また、キスはたんぱくでクセがないため、天ぷらや刺身、塩焼きなども食して美味です。この記事を参考に、キス釣りを楽しんでみてください。
コメント