堤防や海釣り公園などで手軽に釣ることができ、ファミリーフィッシング向けのターゲットであるイワシ。釣りの対象魚としてだけでなく、スーパーマーケットの鮮魚コーナーや、缶詰め売り場で見かけることも多く、日本人にとって非常に身近な魚といえるでしょう。
しかし、イワシの生態などをくわしく把握している方は、釣り人のなかでも意外と少ないのではないでしょうか。
そこで今回は、イワシをたくさん釣っておいしく食べるため、イワシのことを深掘りして解説します。
イワシってどんな魚?生態や特徴
イワシの分類
イワシと名のつく魚は数が多く、世界中で300種以上ともいわれています。ただし、名前にイワシとついても、生態や特徴の共通点が薄いことも多く、分類のしかたは非常に複雑。国ごとに呼び名が変わる魚もいますので、とてもわかりづらいですね。
日本国内では、食用や釣りの対象になる「イワシ」とよばれる魚はマイワシとウルメイワシ、カタクチイワシの3種類です。以下でそれぞれの特徴をご紹介していきます。
|マイワシ
マイワシはニシン目ニシン科マイワシ属の魚。日本でイワシと呼ばれる魚のなかで、もっとも一般的なものがマイワシです。
円筒形の細長い魚体は、背中が青黒く、腹側が銀色がかった白。体の側面に黒い斑点が並んでいるのが特徴で、「ナナツボシ」という別名で呼ばれることもあります。
日本のイワシ3種類のなかで、斑点があるのはマイワシだけなのですが、イワシを模したルアーは側面に黒い斑点を再現しているものが非常に多いです。
それだけマイワシがイワシ類のイメージリーダーとして、世間一般に認知されているということでしょう。
1年で8cmから17cm前後、2年で17cmから20cm前後、3年で20cmから25cm前後、最大で30cmほどに成長しますが、よく目にするサイズは20cm前後です。寿命は平均的には5年から6年、最長で8年ほどで意外と長生きの魚ですね。
マイワシの旬は5月から10月と長めです。旬が長いのは、マイワシが回遊魚であり、日本では沖縄以外のさまざまな地域で漁獲されることが関係しています。5月から7月は関東地区が旬、8月から9月は北海道地区が旬といった具合に、旬の時期がなかなか途切れません。
|ウルメイワシ
ウルメイワシはニシン目ニシン科ウルメイワシ属の魚。日本で獲れるイワシのなかではもっとも数が少ない種類です。
大きな目の表面に膜が張っていて、目がうるんだように見える特徴があり、「潤目」の語源にもなっています。
マイワシとのちがいは、「大きなうるんだ目」のほかにも以下の特徴があります。
- 体の側面に黒い斑点がないこと。
- 下アゴが上アゴよりも少しだけ突き出ていること。
- 背ビレよりも腹ビレが後方に付いていること。
- ウロコが細かいこと。
1年で体長13cm前後、2年で17cm前後、3年で20cm前後、最大で30cmほどに成長します。寿命は2年から3年ほどで、一年魚ではないものの短命。
ウルメイワシの旬は脂がのる10月から2月ごろです。イワシの刺身のなかでは、旬のウルメイワシの食味が最高とされますが、傷みがとても早いため、なかなか一般市場に出まわることがありません。刺身で食べられるのは釣り人ならではの特権といえるでしょう。
また、脂の少ない夏場のウルメイワシは、干物にされることが多いです。どのイワシも干物の材料になりますが、ウルメイワシの干物はその中でも最高級といわれます。
|カタクチイワシ
カタクチイワシはニシン目カタクチイワシ科カタクチイワシ属の魚。3種類のイワシのなかではもっとも小型です。日本では煮干しの原料としてなじみ深い魚ですね。
名前の由来となっているように、下アゴがとても小さく口が片方しかないように見える点が特徴。背中が黒に近い藍色であることから「セグロイワシ」と呼ばれることもあります。
成長が早く、1年で体長12cmほどになり、繁殖も可能になりますが、寿命は2年から3年ほどと短いです。最大で体長18cmまで成長します。
カタクチイワシは初夏から秋にかけてが旬とされますが、産卵前後の個体以外はそれほど味が変わることがないため、それほど気にする必要はありません。
イワシの利用と役割
自然界では、生態系のなかで下位に位置するイワシ。様々な生物の食料となり、海洋資源として重要な役割を担っています。弱く、食べられる立場のイワシですが、その莫大な数と繁殖力によって、絶滅することなく種を維持しています。
食文化の面でも、イワシは世界中で利用されている魚。世界各国で様々に調理され、その国の食文化に溶けこんでいます。アンチョビやオイルサーディン、ナンプラーなどが有名ですね。
日本では、イワシは鮮魚として食卓にのぼるほかに、煮干しや干物、缶詰めなどの加工品の材料になり、稚魚のイワシはシラスとして食されます。また、イワシは食用以外にも家畜や養殖魚のエサ、畑の堆肥などとして利用されてきました。
「せっかく獲れた食べられる魚を堆肥にするなんて、もったいない」と感じますが、以前は「捨てるほど獲れる」時期があったことも確かなのです。
イワシの現状
昔からイワシは、漁獲量が増減しやすい資源変動の大きな魚といわれています。
1988年には日本周辺海域での漁獲量が450万トンに達したイワシですが、その後は大幅な減少傾向に。近年は少しずつ回復してきているとはいえ、最盛期には戻っていません。
以前は家計を助ける安くて身近な食材でしたが、現在ではちょっとした高級魚なみの流通価格となることも。
イワシの漁獲量が増減する原因として、漁業による乱獲や海流の変化、気候変動による海水温の上昇などが考えられています。しかし、様々な要因が複雑にからんでおり、確かな要因は不明です。
イワシの生息地は?日本では釣れる
イワシは世界各地に生息
イワシは回遊魚であり、広大な海を泳ぎまわる魚。ただし、外洋ではなく沿岸部の浅い海域を中心に生息しています。マイワシはおもに東アジア沿岸域、ウルメイワシは世界各地に生息しており、オーストラリアやアフリカなど南半球でも漁獲されます。カタクチイワシはおもに太平洋西部が生息域です。
日本のイワシの生息域と釣り場
もちろん日本の全国各地にもイワシは生息しています。ただし、イワシは回遊魚であるため、回遊してこなければまったく釣れないことも。釣果情報などをチェックして出かけましょう。
イワシを釣りやすい釣り場は、堤防や海釣り公園など、足下から水深があり、足場の良い場所です。潮通しの良い堤防の先端付近や、曲がり角など潮の流れが変化するポイントが有望です。
イワシ釣りの方法や仕掛け方法
サビキ釣り
イワシを釣る方法として、もっとも一般的なものがサビキ釣りです。
サビキ釣りでは、サビキと呼ばれるエサに似せたハリが3〜6本ほどついた仕掛けを、コマセ(撒きエサ)を入れたカゴとともに海中に投入します。
海中にただようコマセにサビキをまぎれこませて、魚をだます釣法と言えますね。
一度にたくさんの魚をかけられる点や、ハリにエサをつける手間がかからず手返しが良い点で、イワシのような小魚の数釣りに向いています。
コマセはアミエビが主流です。最近では、チューブ入りのコマセが市販されており、手を汚さずサビキ釣りができるようになりました。臭いが気になる方向けに、コマセにフルーツの香りを付けている商品まであります。
トリックサビキ
トリックサビキは通常のサビキ釣りとよく似ていますが、本物のエサ(アミエビ)をハリにつける点が大きなちがいです。魚がスレてしまい食いが悪いときなどは特に威力を発揮します。
しかし、ハリにエサをつける手間がかかるため、手返しはどうしても悪くなってしまいます。汚れてしまう道具が増えてしまう点もデメリット。通常のサビキでもどんどん釣れる状況では、あまりメリットが感じられないでしょう。
サビキ釣りとトリックサビキに使用する竿やリールは、安価なセットが数多く市販されています。金銭的にお手軽に始められるため、釣り初心者の方におすすめです。
イワシの味や調理法
「鰯七度洗えば鯛の味」という言葉があるように、基本的に生臭いイワシも、適切に調理することでおいしく食べられます。新鮮な脂がのったイワシの刺身は、とろけるような美味といわれます。
生臭さが気になる方には、ショウガやネギなどの薬味でにおいを消す方法も有効ですね。
青魚であるイワシは傷みが早い魚ですので、釣れたらすぐにしめて、新鮮さを保つことがおいしく食べる秘訣です。
イワシの下処理
イワシはとてもウロコがはがれやすい魚。小型のイワシであれば包丁やウロコ取りを使わず、手開きでも下処理できます。
内臓は残したままでもかまいません。イワシの体は消化物を長くとどめておくことができない構造で、内臓が傷みにくいからです。食べると苦味がありますので、好みに応じて処理しましょう。ただし、内臓を食べるときは、よく火を通してください。
今回は、おすすめのイワシ料理として、つみれ汁とオイルサーディンをご紹介します。
イワシのつみれ汁
イワシの身をすりつぶして作る団子がおいしいつみれ汁。薬味の風味とふわっとした食感が食欲をそそる一品です。
|材料(2人分)
- イワシ 3尾
- 片栗粉 小さじ2
- 塩 小さじ1/2
- ネギ 10cmほど
- 卵黄 1個
- ショウガ 1かけ
- みそ 大さじ1
|作り方
- 下処理をしたイワシをまな板の上でたたいて、細かく刻みます。
- イワシに片栗粉、塩、刻んだネギ、卵黄、ショウガを加えて混ぜ合わせます。
- すり鉢にうつし、さらに細かくすりつぶします。
- お湯の中に、イワシを投入します。スプーン2本をうまく使って丸い団子になるように。
- アクをとり、みそで味を整えたらできあがりです。
イワシの刻み具合で食感が変わります。フードプロセッサーを使えばより細かく、より手早くできます。粗めの食感が好きならば、すり鉢を使わずボールで混ぜ合わせるだけでもOKです。好みに応じていろいろためしてみてください。
カタクチイワシの自家製オイルサーディン
缶詰めでおなじみのオイルサーディン。じつはフライパンひとつで簡単に作ることができます。保存がきくようになりますので、イワシがたくさん釣れた時はぜひおためしください。
|材料
- イワシ 適宜
- オリーブオイル 約500cc(イワシが浸かる程度あればよい)
- 食塩
- ニンニク 1~2かけ
- 鷹の爪 1~2本
- ローリエ 1〜2枚
|作り方
- イワシをさばく。大きなイワシは3枚おろしに、小さなカタクチイワシであれば、頭とウロコと内臓をとるだけでもOKです。
- 濃度10%の塩水を作り、イワシを1時間ほど漬けこみます。
- キッチンペーパーでイワシの水気をよくふきとり、フライパンに並べ、全体が浸るまでオリーブオイルを注ぎます。ニンニク、ローリエ、鷹の爪も入れます。
- 最初は強火、気泡が出てきたら弱火にかえて1時間ほど様子を見ながら煮込みます。焦がさないように注意しましょう。
- 自然に冷めるまで待ちます。冷めたら保存容器に移します。冷蔵庫に入れておけば、1週間ほど保存できますよ。
コツは油で「揚げる」ではなく「煮る」ということ。強火で調理すると、揚がってしまいますし、少し目を離しただけで焦げてしまいますのでご注意ください。
まとめ
イワシは釣って良し、食べて良しのとても魅力的な魚です。たとえ近所の堤防でも、うまく群れにあたれば100匹超えの大漁も夢ではありません。さらに、釣具も安くそろえられ、釣り方はとても簡単です。ワイワイ並んで釣りができる点も良いですね。
イワシ料理のレシピは数えきれないほどあります。釣れるたびに新しい料理のレパートリーを増やす楽しみもありますよ。
あなたもぜひイワシ釣りにチャレンジしてみてください。今回の記事がお役に立てば幸いです。
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