マス類などと並んで、河川などの淡水にすむ食べられる魚として人気の鮎(あゆ)。「清流の女王」とも呼ばれ淡白な白身で香りがよいため、高級魚として振る舞われる美味しい魚です。
釣りの対象魚としても人気の鮎は、「友釣り」と呼ばれる独特の釣り方があり、釣りに精通したベテランたちをも虜にする魅力のあるターゲットです。
この記事ではそんな鮎の生態や特徴、釣りに関する知識や注意点を解説していきます。また後半には鮎の美味しい食べ方も紹介していますので、あわせてチェックしてください!
鮎ってどんな魚?生態や特徴
分類:サケ目アユ科
鮎は誰でも知っている有名な魚ですが、分類学的には「サケ目アユ科」や「キュウリウオ目キュウリウオ科」などと違った分類で紹介されています。
研究施設に問い合わせを行なったところ、これはどのように分類するかという研究者の見解によって変わるとの回答をいただきました。
学術的には2013年に発行された「日本産魚類検索」を参照する場合が一般的で、本記事ではこの書籍に合わせ「サケ目アユ科」としています。
生態も特徴的な面が多くあり、食卓でも人気なサケやシシャモなどとも近縁種とされている不思議で意外な魚です。
生息域が変化する鮎の一生
釣り人が「年魚」と呼ぶ魚の一種で、鮎の一生は多くの場合1年間とされています。その一生を淡水の河川や沿岸の海ですごし、水温といった外的変化や成長具合によって生息するエリアが変化する特徴があります。
晩夏から初秋に河川下流部で孵化した鮎の稚魚は、海水域(海)の沿岸部で暮らします。この時期の鮎は「氷魚(ひうお)」や「稚鮎(ちあゆ)」と呼ばれ、プランクトンや小さな甲殻類、水生昆虫などを食べる肉食性の性格を持ちます。
10cmほどの大きさに育つ春頃から、河川の遡上をはじめ、岩などについた藻類(コケ)が主食と変化します。夏の水温の上昇に合わせ適した環境を求めた鮎は、水温の低い上流部へと河川を遡ります。
20〜30cmに育った秋になると、鮎は成熟期に入り産卵のため河川を下ります。この時期から鮎は「さび鮎」と呼ばれ、茶褐色の背部にオレンジ色の腹部の婚姻色に変化します。また河川を下ることから「落ち鮎」とも呼ばれています。
河川下流部で産卵を行なった多くの鮎は、その一生を終えます。しかし一部の鮎は生き残り、年を越したものは「とまり鮎」や、他の年魚と同様「古背(ふるせ)」と呼ばれます。
鮎の特徴と釣りとの関わり
塩分濃度が低い沿岸部に限られますが、前述したように海水でも生活が可能な耐性があります。幼魚の頃は群れで行動する習性があり、成長し藻類を主食とするようになると食料を確保するため縄張りを形成するようになります。
縄張り意識は非常に強く、侵入してくる他の鮎を追い払う激しい体当たりを行ない攻撃します。また鮎が視覚的に強く認識する黄色の斑点が現れることも、縄張りをもった鮎の特徴です。
鮎は25cmほどが一般的な大きさで、30cmを超える大型もいます。30cmを超える鮎は「尺鮎」と呼ばれることもあり、鮎釣り師の憧れの的となっています。
また他ターゲットを狙った釣りに関しても非常に重要な存在で、栄養価の高い鮎はフィッシュイーターが好んで食べるベイト(エサ)になります。
「春の稚鮎」や「秋の落ち鮎」といった釣り方のパターンがあり、ルアーにも多くの鮎カラーがラインナップされているほどです。
鮎の生息地は?日本では釣れる?
東アジア一帯に生息
鮎は北海道から沖縄まで日本国内一帯に生息するほか、朝鮮半島や中国、南はベトナムまで広いエリアの河川に生息しています。
ウナギやサケと同様に大半は親と同じ河川を遡上するようですが、別河川への遡上も確認されています。
また国内には「小鮎」と呼ばれ、ダムなどで遮られている河川や琵琶湖へとつながる河川には、陸封型の海に降りない習性を持つ個体群が存在します。国内ではほかにも、沖縄に生息する亜種の「琉球鮎」が確認されています。
当然日本でも釣りが可能な魚で、福井県の九頭竜川や高知県の仁淀川などが釣り人に人気の有名河川です。
河川は比較的大きく清流を好んでいますが、小さな河川でも遡上が見られます。また河川から近い海でも、他の魚に混じり稚鮎が釣れることもあります。
鮎釣りの方法や仕掛け方法
釣りをはじめる前に注意すること
上流から海とつながる河口部まで河川一帯を行き来する鮎は、堰やダムなどが増えたため生息数が減少していました。そのため各地の河川を管理する漁業組合(漁協)が、養殖した鮎を放流しています。
このように管理された河川では、釣りを行なうための許可証(遊漁券)が必要です。遊漁券は漁協や釣具店などで購入が可能で、1日券と年券が販売されている場合が一般的です。
また釣り方にも指定がある場合や、釣りをしてよい期間も定められています。鮎の成長にあわせ一般的に、6月から8月前後の夏場が解禁期間とされています。
定番の友釣りやほかには⁉︎
鮎を狙う釣り方には、人気の「友釣り」のほかにもいくつか種類があります。「毛鉤釣り」や「コロガシ釣り」と呼ばれる釣り方や、琵琶湖周辺の河川ではサビキ釣りに似た釣り方で小鮎を狙った釣りが人気です。本記事では鮎釣りの代表的な釣り方「友釣り」について紹介します。
友釣りの釣り方と魅力とは⁉︎
一般的な釣りの大半は、魚の捕食行動=「エサを食べる」という行動を利用した釣りです。しかしながら鮎の友釣りでは、前述した縄張りを持つ習性を利用して狙います。「オトリ」となる鮎を用意し、このオトリ鮎を縄張りに入れ攻撃してきた鮎を引っ掛けて釣る釣り方が友釣りです。
オトリ鮎を上手く縄張りに誘導することは大変難しく、人馬一体ならぬ人魚一体でオトリ鮎をコントロールしないと釣りが成立しません。この駆け引きが多くのベテラン釣り師たちを魅了し、多くの釣り人がハマる理由です。
専用タックルと周辺アイテムが必要
友釣りは一般的な釣りと違った特徴が多くあり、基本的に専用タックルが必要です。
リールは使わず、竿は9〜10mの長い専用竿を使用します。竿は軽く感度が求められるため他の釣竿に比べ高額になりやすく、数万円で購入できるものから50万円近くとなる上級モデルも存在します。
ラインは水中と水上で2種類のラインを使用し、水中糸にはナイロンやフロロ、メタルなどの素材で出来たラインを状況によって使い分けます。
仕掛けには一般的に、オトリ鮎を固定する「ハナカン」と呼ばれる器具やターゲットとなる鮎を掛ける「掛けバリ」、掛けバリの長さを調整する「逆バリ」や仕掛けの位置を確認するため毛糸などでできた「目印」を使用します。
一般的なタックルは上記のようなセットですが、熟練者には変わった仕掛けを使用したり、各アイテムにこだわって自作したりすることもあります。
仕掛け作りが一見大変そうと思いがちですが、釣具店にはすでにセットされた完成仕掛けも用意されています。そのため、仕掛け作りが苦手な人やビギナーでも安心して釣りは可能です。
友釣りではタックルだけでなく、さまざまな周辺アイテムが必要です。オトリ鮎をキープするために使用する「曳舟(ひきぶね)」や「オトリ缶」と呼ばれるオトリ鮎を運ぶための入れ物、掛かった鮎を取り込む「タモ」やタモを固定する「アユベルト」などです。
また、河川に入り込んで釣りを行なうため「鮎タイツ」や「鮎タビ」といったウェア類も揃えた方がよいアイテムです。
友釣りで注意すべきこと
流れの速い川に入り釣りを行なうため、救命胴衣(ライフジャケット)は抵抗となり流され事故を誘発してしまう場合があります。そのため友釣りでは、慣例的に着用せず釣りを行なう釣り人が多くいます。
事故も多く発生する釣りのため、自身の体力を過信せずに釣りを行なうこと、状況によっては救命胴衣の着用も心掛けましょう。
お手軽友釣りもアリ!
これまで紹介してきた友釣りは専門で揃えるアイテムも多く、正直なところ「タックルが高い…」、「格好がダサい…」、「オジサンの釣り」といった意見もよく耳にします。
しかしながら各地の漁協では、タックルの貸出を行なっていることがあります。貸出を行なっている漁協を調べて、まずはレンタルで楽しんでみることも1つの手段です。
また「ライトスタイル」と呼ばれるキャンプや海水浴に行くようなファッションで友釣りを行なうことを、釣具メーカーが提案しはじめています。これからも時代に合わせて、スタイリッシュに進化していくことにも注目です。
オトリ鮎の入手方法
タックルを用意すれば次に必要なものはオトリ鮎です。遊漁券が必要な河川では、漁協や道中にオトリ鮎を販売している店舗があり購入が可能です。釣果や釣り場の状況も聞くことが出来るため、電話等で事前に在庫状況の確認や予約を行なっておくとよいでしょう。
オトリ鮎の元気さが釣果に影響するため、弱った時には別の鮎と交換を行ないます。そのため2、3匹購入することが一般的で、鮎は極力弱らせないよう取り扱うことが重要です。
釣り方
釣り場に到着しタックルやオトリ鮎のセットが出来たら、オトリ鮎を誘導し縄張りへと泳がせていきます。縄張りの推測には「ハミ跡」と呼ばれるコケを食べた跡や流れの変化、時間帯などを考慮して推測していきます。オトリ鮎の誘導では、竿を操作し強制的に縄張りへ連れていったり、自由に泳がせてみたりとさまざまな扱いがあります。この縄張りの見極めやオトリ鮎の誘導に技術や経験が必要とされていて、友釣りの醍醐味であり面白さが感じられる理由です。
縄張りへと導き鮎が掛けバリに掛かれば、グンと重みが竿に伝わります。掛かった鮎は川の流れが抵抗となるため、空中を飛ばすように釣り人の元へと引き戻します。近づいてきた鮎はタモでキャッチしますが、この取り込みにもテクニックが必要とされています。
取り込んだ後は、元気の良い釣れたばかりの鮎とオトリ鮎を交換し、再び釣りを再開します。
鮎の味や調理法
定番はやはり塩焼き!
鮎は頭からしっぽまで捨てずに食べてしまう人がいるほど骨や皮が柔らかく、内臓を出したり捌いたりといった下処理が必要ない魚です。
定番の塩焼きは、好みの量の塩を振りかけ焼くだけの簡単な調理法です。臭みや食感が気になる人は、包丁などで鱗と内臓を取り除いてから調理しても良いかと思います。また、ヒレに塩を摺り込むことで焦げを防ぐことが出来ます。
家庭ではコンロのグリルで焼くことが一般的ですが、串に刺し炭火などで焼き上げて食べることも風情があります。釣り場でサッと準備し釣りたてを食べることも、釣り人の特権です。
こってり甘辛い甘露煮
飴色の照りが食欲をそそる甘露煮は、甘辛い煮汁が淡白な身に染み込む人気の調理法です。また魚の調理法としては比較的日持ちするため、保存が効きます。
調理方法は醤油やみりん、日本酒、砂糖を同量程度を目安に、適量混ぜ合わせた煮汁を温めます。
鮎は内臓や鱗をとる事もありますがそのままでもよく、水洗いし煮汁に静かに漬けます。鰹節や生姜を入れてもよく、一度沸騰させたあとは弱火で煮込みます。向きを変えたり煮汁をかけたりして身全体に味を染みこませます。
煮込み時間が長いほど味が染み、身も柔らかくなるため好みに合わせて時間を調節します。
まとめ
景色のよい清流に入り涼しさを感じられ、暑い夏の釣りを代表する鮎の友釣り。キャンプやバーベキューといったレジャーとも相性が良い釣りで、釣れた鮎をその場で食べるといった楽しみ方もあります。
今回は鮎をテーマに、その生態や釣りに関する知識、食べ方をお伝えいたしました。一度挑戦すれば虜になる面白さは、鮎の友釣り以外では味わえない魅力があります。
手軽にはじめられる方法もお伝えしましたので、ぜひ挑戦してみてください!
コメント