トビウオは名前の通り、飛ぶことのできる魚です。アゴ出しの材料として馴染みがある魚でもあります。しかし、名前と飛ぶこと、アゴ出汁の原料としては知られていますが、その他の生態は意外と知られていません。
意外にも世界中に50種類、日本にも20種類以上とトビウオの種類は多いです。その中でも日本では「ハマトビウオ」、「ホソトビウオ」、「ツクシトビウオ」、「トビウオ」が食用として親しまれています。
この記事では意外と知られていないトビウオの生態や特徴、釣りの方法や調理法を紹介します。記事を参考にトビウオ釣りと調理を楽しんでください。
トビウオってどんな魚?生態や特徴
分類:ダツ目 トビウオ科
トビウオは、特徴的な形状と色彩で認識がしやすい魚です。体は細長く、紡錘形をしており、大きな胸ビレと腹ビレがあります。まさに飛ぶために特化した翼のような胸ビレと腹ビレが最大の特徴です。
色合いは背ビレ側は青黒く、一方で腹側は鮮やかな銀白色をしています。アゴ出汁やアゴの呼称があるように、顔を正面から見るとアゴが飛び出ているように見えるのも特徴の一つです。幼魚時代は、サヨリのように下アゴが伸びています。
また、トビウオには、目に見えない部分にも他の魚には無い特徴があります。トビウオは飛行距離を伸ばすために体を軽くする必要がありました。そのため、進化の過程で、胃袋は無くなり、消化器官も短くなったとされています。
馴染みのあるトビウオは4種類
日本には20種類以上のトビウオが存在すると言われていますが、多く目にするのは4種類です。
ハマトビウオ
もっとも大きなトビウオで、大きいものは全長50cm 重さが1kgにもなります。岩手から九州の太平洋側に広く分布しています。産卵は冬から春で、旬は春です。伊豆諸島や九州で多く漁獲されています。また、トビウオの中では1番美味しいです。
ツクシトビウオ
全長35cmほどの中型のトビウオです。北海道から屋久島まで広く分布しており、トビウオ類では最も岸寄りを回遊しています。産卵が5〜8月で旬は6〜7月です。刺身や焼き魚の他に加工品にも利用されています。
ホソトビウオ
全長が25cmほどで、名前の通り細い体が特徴です。東北地方から台湾までの広範囲に分布しており、大きな群れを作り回遊しています。産卵は5〜7月で、北上しながら産卵します。煮干しなど加工品として利用されることが多いです。
トビウオ
全長が35cm程度に成長する中型のトビウオです。日本列島周辺に広く分布しています。産卵期は9〜10月で旬は秋です。九州地方では伝統的に漁獲されています。
トビウオが飛ぶ理由とは
トビウオは天敵から逃げるため飛んでいます。トビウオの生息している海域には、マグロやシイラなどの肉食性の回遊魚が多く、トビウオは大型の回遊魚の餌となっています。優雅に飛んでいるわけではなく、必死に逃げるために飛んでいるのです。
種類による飛び方の違いはなく、大きい尾びれをを左右に振り、35km/hのスピードで滑走し、水面を飛び出します。その後は胸ビレと腹ビレを広げ飛行し、50〜70km/hのスピードで飛行します。
高さ3〜5mの高さを200〜600mの距離を飛び、さらに必要に応じてブレーキをかけ、海に潜れる能力が備わっている器用な魚です。
トビウオの生息地は?日本では釣れる?
世界的には太平洋、インド洋、大西洋の亜熱帯・温帯海域に広く生息しています。また、日本では、周辺海域のほとんどが生息地です。回遊魚であるトビウオは、日本海側も含め広く分布しており、徐々に北上するので種類や時期によって見られる場所は変わってきます。
漁獲に関しては、九州地方や山陰地方が盛んで、鹿児島県、長崎県、島根県が特に産地として有名です。また、全体の漁獲高の7割以上を鹿児島県が占めています。
トビウオを狙った釣りは一般的には難しいとされています。岸寄りを回遊することから、陸地からも釣れないことはありませんが、釣れるのは稀です。イカ釣りの際に、ライトの光に反応するなどして針に引っかかることや、陸に飛んでくることはあります。
トビウオ釣りの方法や仕掛け方法
トビウオは狙って釣りをするのが難しい魚です。回遊の情報があればチャンスですが、ピンポイントでトビウオを狙うのは難しいです。しかし、釣るためのポイントはいくつかあります。ここでは難しいトビウオ釣りにチャレンジするためのポイントを紹介します。
トビウオはライトの灯りに反応して近寄ってくる習性があります。この習性を利用することが、効果的にトビウオを誘い出すためのポイントになります。
海面近くを泳ぎ、動物プランクトンを捕食するトビウオは、表層を狙った仕掛けで釣りをすることもポイントです。
トビウオを釣るための餌は、プランクトンのオキアミが最も適しています。稀にメタルジグなどで釣れることもありますが、これはパニックになったトビウオがたまたま針にかかっただけということが多いです。
オキアミブロックを準備し、これを撒き餌にすることでトビウオを誘引する可能性が高まります。この手法がトビウオ釣りには最も適している釣り方だと考えられます。
仕掛けは専用の仕掛けがないので、サヨリ釣りに使う仕掛けが最も適しています。サヨリ釣りなどに使う玉ウキ、シモリを使った仕掛けで表層を狙うのが基本です。
仕掛け
- ロッド 5mぐらいの磯竿
- リール 2000番のスピニングリール
- ライン 5号
- サヨリ用の仕掛け
トビウオの味や調理法
トビウオは青魚ですが、癖や臭みがない魚です。雑味や脂分も少ないトビウオは、上品でさっぱりとしたアゴ出汁の原料として特に有名です。また、トビウオの卵は、トビッコとして子供から大人まで幅広い層に愛されています。
小骨の多さと鮮度の落ちの速さが気になりますが、淡白な味わいから塩焼き、フライ、汁物など、さまざまな調理法で食べられています。新鮮なトビウオが手に入ったらお刺身やなめろうにして食べるのがおすすめです。
トビウオのお刺身
出典元:写真AC
トビウオは鮮度の落ちが早い魚ですが、鮮度が良ければお刺身で食べることができます。捌くのが難しそうに思われますが、大きなヒレの処理さえしっかり行えば意外と簡単に捌くことができます。
トビウオのお刺身の作り方
- 包丁で腹ビレを押さえ、身を持ち上げてヒレを引き抜く。
- 包丁を使ってうろこをとる。
- 胸ビレの後ろを斜めに切り、頭をとる。
- 尻から包丁を入れ腹を切り、内臓を取り出す。
- 血合いに包丁を入れたあと、水でうろこと血合いを洗い流す。
- キッチンペーパーで水気をとったら三枚おろしにする。
- 身に沿って包丁を入れ、腹骨をそぐ。
- 包丁の背を使い皮を剥ぐ。
- 小骨の多い血合の部分を切り取る。
- お好みのサイズに切り、盛り付ければ完成です。
あっさりとした味わいとモチモチとした食感を楽しむことができます。
トビウオのなめろう
トビウオのなめろうは、アジのなめろうにも負けない美味しさだとされています。薬味の効いたトビウオのなめろうは、お酒の肴やお茶漬けなどにするのがおすすめです。
トビウオのなめろうの作り方
材料(2人分)
- トビウオ(刺身用) 1匹
- 長ネギ 5cm
- ショウガ 10g
- ミョウガ 1個
- みそ 大さじ1
作り方
- トビウオを細切りにする。(お刺身の残りでも大丈夫)
- ネギ、ショウガ、ミョウガをみじん切りにする。
- 細切りにしたトビウオの上にみじん切りにした②とみそを乗せる。
- ③を混ぜ合わせながら包丁で細かくたたく。
- 全体が混ぜ合わさりねっとりしてきたら完成です。
みそやネギはお好みで増やすなどしてください。
トビウオのつみれ汁
アゴ出汁が有名なトビウオは汁物が絶品です。
少し手間はかかりますが、極上の出汁で作るつみれ汁は、是非、作って食べて欲しいレシピの一つです。
トビウオのつみれ汁の作り方
材料(4人分)
- トビウオ 2匹
- 昆布 10cm程度
- 水 1リットル
- 白だし 大さじ1
- 酒 大さじ1.5
- おろしショウガ 大さじ1
- 卵 1個
- 薄力粉 大さじ1
- ネギ 適量
作り方
- 水を張った鍋に昆布を浸す。
- 捌いた身の半分を粗く叩き、残りの半分は酒大さじ1と生姜を混ぜてすり身にする。
- 粗く叩いた身とすり身をボールに入れ、酒を少量加えて混ぜ合わせる。
- ③に卵と薄力粉を入れてさらに混ぜ合わせる。
- ④にネギを混ぜ合わせたら、冷蔵庫に入れて保管する。
- しっかり焼いたアラを①に入れ出汁を取る。
- 濾した出汁に白だしを加える。
- 中火で沸かしたままの鍋にすり身を落とす。
- つみれに火が通るまで煮れば完成です。
アラの量が少なければ、市販の出汁などで調整してください。
まとめ
今回は飛ぶ魚トビウオについて、生態や特徴、釣り方やおすすめの調理法などを紹介させていただきました。
飛ぶ魚としては多くの方に認知されているトビウオですが、生態や飛ぶ理由などは意外と知らなかったという方が多かったと思います。
釣り上げることはなかなか難しいとされている魚ですが、食べても美味しいトビウオをあえて狙いに行くのも楽しいです。
この記事を参考にトビウオ釣りにチャレンジして、美味しいトビウオを味わってみてください。
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