みなさんは、シタビラメという魚をご存じでしょうか?
私がはじめてこの魚を知ったのは子供の頃で、魚類図鑑で紹介されていたものでした。まるで子供がいたずらで書いたようなその見た目に、海にはこんな不思議な魚がいるのか!ととても驚いたことをよく覚えています。
今回はそんな見た目がとても風変わりなシタビラメについて、生態や特徴のほか、釣り方、調理方法についてご紹介したいと思います。
写真では見たことがあるという方でも、実物を目にするときっと驚くはずです。この記事を参考にシタビラメを釣りあげて、いちどその目で確かめてみてください。
シタビラメってどんな魚?生態や特徴
分類:カレイ目ウシノシタ科およびササウシノシタ科
シタビラメとはカレイ目ウシノシタ科および、ササウシノシタ科に属する魚の総称のことをいいます。つまり、ある一種類の魚につけられた固有名称ではないということです。名前にヒラメとありますが、実はカレイの仲間です。
成魚の体長は20~30cmが一般的ですが、なかには40cmを超える個体もいます。体は平らで上から見ると笹の葉の形をしています。目の位置はウシノシタ科は左、ササウシノシタ科は右。体色は背中側が褐色や灰色のものが多く、腹側は白色を呈しています。
シタビラメは脂質が少ない魚として知られています(体重の1%未満)。一般的に魚は季節によって脂質量が変わり、これにより味も変化します。ところが、シタビラメは脂質がとても少ないことから味の季節変化が少なく、漁獲の多い時期が旬だとされています。
産卵期は春~夏とされており、この時期になると沿岸の浅海で産卵します。海中に産み落とされた卵はおよそ数日でふ化。生まれてしばらくたつとプランクトンを食べ成長し、大きくなると海底の砂泥に潜むゴカイや甲殻類、小さな二枚貝なども食べます。
その後、およそ2歳(体長20cm以上)になると成熟して産卵に参加。寿命は6年前後だといわれています。
名前の由来は牛や犬の舌(ベロ)
シタビラメ(舌平目)の名前の由来は動物の「舌(した)」です。シタビラメの仲間には「〇〇ウシノシタ」や「〇〇イヌノシタ」という名前の種がいることから分かるように、その姿かたちが「牛」や「犬」の舌(ベロ)に似ていることからついた名前です。
また、動物の「舌」ではなく、「靴底(くつぞこ)」に似ているとして、九州の有明海ではクロウシノシタのことを「クツゾコ」。舌平目のムニエル発祥の地であるヨーロッパでは、シタビラメ(ササウシノシタ科)のことを「sole(ソル)=靴底」と呼びます。
フランス料理人気で高級食材に!
日本においてシタビラメは、塩焼きや煮付け、一夜干しなどの家庭料理で食べられるだけで、昔はあまり重用されてきませんでした。ところが、日本にフランス料理のブームが訪れると、フランス料理には欠かせないシタビラメが注目されて大人気となりました。
これによって日本で漁獲されるシタビラメのうち、フランス料理の食材として利用できる大型の個体(コウライアカシタビラメ、クロウシノシタなど)は高級食材として高値で取引きされるようになりました。
ちなみに、本場のフランス料理で使われているシタビラメは、日本のシタビラメとは種類が違い、カレイ目ササウシノシタ科に属するドーバーソル(dover sole)という種類です。目の位置は右にあり、体のサイズは日本のシタビラメより大きくなります。
シタビラメの生息地は?日本では釣れる?
日本近海に生息するシタビラメは30種を超えます。ここでは日本近海で漁獲され、さらに市場にも多く出回っている代表的な4種のシタビラメについて解説を進めます。
アカシタビラメ、コウライアカシタビラメ、イヌノシタ
関東以南の太平洋岸、新潟県以南の日本海沿岸、瀬戸内海、有明海、東シナ海、南シナ海、黄海沿岸の水深100m以浅の砂地や砂泥底に多く生息しています。日本での主な産地は有明海、瀬戸内海で、底引き網や刺網、定置網で漁獲されます。
クロウシノシタ
北海道小樽以南の日本沿岸、瀬戸内海、有明海、東シナ海、南シナ海、黄海沿岸の水深70m以浅の砂地や砂泥底に多く生息しています。日本での主な産地は有明海、瀬戸内海、若狭湾、伊勢湾、相模湾で、底引き網や刺網、定置網で漁獲されます。
一般のレジャーとしての釣りでは、上で記した生息地の沿岸(砂浜、堤防)でほぼ一年を通してシタビラメ釣りを楽しむことができます。
シタビラメ釣りの方法や仕掛け方法
シタビラメはこの魚を専門で狙って釣るという魚ではありません。シタビラメと生息地がよく似ているシロギスやカレイ、ヒラメ、マゴチ、イシモチ狙いの外道として釣れる魚としてよく知られています。
このためシタビラメを狙う際の仕掛けや釣り方は、上に記した魚たちを狙うときのものと全く同じです。これらの魚たちは海底が砂や泥でできた場所に好んで生活しています。釣り場としてはサーフ(砂浜)が一番ですが、周囲に砂や泥があれば堤防からも狙えます。
以下に、初心者でも楽しめるシタビラメ釣りの方法を2つご紹介します。
チョイ投げ釣り(サーフ&堤防)
これはスピニングリールを使った投げ釣りのひとつです。本格的な投げ釣りでは仕掛けを50~100mほど遠投する必要がありますが、この釣りではチョイと投げれば簡単に届く20~30m先の沖合を狙います。
経験者によるレクチャーを受ければ、初心者でも簡単にマスターできるのでとてもおすすめの釣り方です。
チョイ投げ釣りで釣果を得るコツは、海底を広く探ることです。仕掛けを投入したら、その場にずっと放置しておくのではなく、リールをゆっくり巻いて海底をズル引きしながら手前まで引いてください。
シタビラメは海底を動くものに興味を示すので、仕掛けのあとをずっとついてきます。ときおりリールを巻くのを止めて、餌を食わせるための時間を作ってやることも大切です。
初心者におすすめのチョイ投げ用の基本タックル(サーフ&堤防用)
- 釣り竿:2~3mの万能リール竿
- リール:スピニングリール(2000~3000番)
- ライン:ナイロンライン 2号 100m以上
- 仕掛け:市販のチョイ投げ用のセット仕掛けがおすすめ
- エサ:ゴカイ、ジャリメ、アオイソメなど
ライトショアジギング(サーフ)
次におすすめなのが、サーフ(砂浜)から狙うライトショアジギングの釣りです。使用するタックルがとてもシンプルで扱いやすいため、初心者でもわりと簡単に楽しめます。
この釣り方はもともと、小~中型の青物(ワカシ・ツバス、イナダ・ハマチ、サバなど)やヒラメ、マゴチなどを狙うためのものです。ですが、これら魚の外道としてシタビラメがよく釣れるので出会える確率は高いはずです。
もし根掛かりの心配のない場所ならば、ルアーを底まで沈めた後、海底をズル引きしてやると良い反応が得られることがよくあります。他にもルアーを引くスピードを変えてやるなど、いろいろと試してみるのが釣果を得るコツです。
ライトショアジギング用の基本タックル(サーフ用)
- 釣り竿:9.6ft前後のライトショアジギング用のリール竿
- リール:スピニングリール(3000~4000番のハイギアタイプ)
- ライン:PEライン 0.8~1.5号 200m以上
- リーダー:フロロカーボンライン 20lb前後
- ルアー:メタルジグ&メタルバイブレーション 20~30g、ヒラメ用ミノーなど
シタビラメの味や調理法
シタビラメは砂底や砂泥底で暮らしていることから、一般的に味や匂いが泥臭い魚だといわれています。調理をする際には、臭いのもとである両面の皮を剥ぐようにしましょう(煮付けなどは皮つきでもOK)。皮は手で簡単に剥ぐことができます。
シタビラメは可食部がとても少ない魚として知られています。頭と内臓を落とすと可食部はおよそ半分です。このため、全長30cm以上の大きなシタビラメはムニエルや煮付け、刺身用に。小さなものは骨まで食べられる一夜干しや唐揚げにするといいでしょう。
以下にシタビラメをおいしくいただける調理法を3つご紹介します。
シタビラメのムニエル
シタビラメといったらムニエルというほど、日本人ならおそらく誰でも思い浮かべるはずの定番のフランス料理です。淡白なシタビラメを濃厚なバターソースで召し上がってください。レモンの酸味が味を引き立てるまさに絶品の料理です。
材料(1人分)
- シタビラメ 1枚
- 小麦粉 適量
- オリーブオイル 適量
- バター 20g
- 絞りレモン 適量
シタビラメのムニエルの作り方
シタビラメの下処理
- 包丁か金タワシを使って両面のウロコをとる。
- 頭の先端付近に包丁で小さく切り込みを入れて、そこを起点に両面の皮を手ではがす(手に塩をつけると滑らず作業がやりやすくなる)。
- 頭の後ろと腹の部分に包丁を入れて、頭と内臓を取り除く。
- 腹の中を水洗いしたあと、キッチンペーパーで余分な水分を拭き取る。
- シタビラメを3枚におろす。ムニエルに使うのは表と裏の2枚のフィレ。
調理
- 両面に塩とコショウをふったあと、小麦粉を両面にしっかりとつける。
- フライパンを中火にかけ、そこにオリーブオイルとバターを入れる。溶けたバターが焦げないように注意しながらスプーンを使って軽く泡立てる。
- フライパンに⑤のフィレを入れて、溶けたバターの中で5分ほど炒める。溶けたバターをスプーンで上からまわしかけることを忘れずに。
- 焼いている面にほんのり色がついたら、裏返してさらに3分ほど炒める。溶けたバターが焦げないように注意しながらまわしかける。
- フィレを取り出してお皿に盛り付ける。フライパンに残ったバターを弱火にかけて、そこに絞ったレモンを入れてソースをつくる。
- フィレにソースをかけて出来上がり。
シタビラメの煮付け
シタビラメが水揚げされる地域で、昔から家庭料理として食べられてきたのがこの煮付けです。淡白なシタビラメを甘辛のしょうゆたれで美味しくいただくことができます。シタビラメは火を通しても身が固くなりずらく、小骨も少ないのでとても食べやすいです。
材料(2人分)
- シタビラメ 2枚
- 水 200ml
- しょうゆ 50ml
- 酒 100ml
- みりん 50ml
- 砂糖 大さじ2
- 薄切りショウガ 1かけ
- ごぼう 適宜
シタビラメの煮付けの作り方
シタビラメの下処理
- 包丁か金タワシを使って両面のウロコをとる。
- 頭の後ろと腹の部分に包丁を入れて、頭と内臓を取り除く。
- 腹の中を水洗いしたあと、キッチンペーパーで余分な水分を拭き取る。
- 皮目の部分に包丁で×印の切れ目をいくつかいれる。
調理
- 鍋に水、しょうゆ、酒、みりん、砂糖、薄切りショウガ、ごぼうを入れたら、強火にかけて煮立たせる。
- 鍋に下処理したシタビラメを入れて沸騰したらあくをとり、落し蓋をのせたら中火で10分ほど煮る。
- 落し蓋を取りのぞいたら、鍋を少し傾けて煮汁をスプーンですくい、魚の上からまわしかける。
- お皿に盛り付けたらできあがり。
シタビラメの一夜干し
シタビラメは体重の8割近くが水分です。一夜干しで水分を抜いてやることで旨味が凝縮して美味しくいただくことができます。ムニエルや煮付けにつかうには、ちょっとサイズが小さいようなシタビラメが手に入ったらぜひ試してみてください。
材料(2人分)
- シタビラメ 2枚
- 水 250ml
- 塩 15g
- その他 干しカゴ
シタビラメの一夜干しの作り方
シタビラメの下処理
- 包丁か金タワシを使って両面のウロコをとる。
- 頭の先端付近に包丁で小さく切り込みを入れて、そこを起点に両面の皮を手ではがす(手に塩をつけると滑らず作業がやりやすくなる)。
- 頭の後ろと腹の部分に包丁を入れて、頭と内臓を取り除く。
- 腹の中を水洗いしたあと、キッチンペーパーで余分な水分を拭き取る。
- シタビラメを3枚におろす。一夜干しに使うのは表と裏の2枚のフィレ。
調理
- シタビラメが入る大きさのバットに水と塩を入れてよくかき混ぜたら、⑤のシタビラメを入れて1時間ほど浸けておく。
- 1時間後にシタビラメを取り出したら、キッチンペーパーで余分な水分を拭き取る。
- 干しカゴの中にシタビラメを重ならないように並べたら、ベランダの風通しのよい場所に吊るして一晩干す。
- 魚焼きグリルかフライパンでお好みの時間焼いたら出来上がり。
まとめ
今回は見た目がとても風変わりでユーモラスなシタビラメについて、生態や特徴のほか、釣り方や調理法などについてご紹介させていただきました。
これまでにシタビラメを釣ったことがある人もない人も、もしかするとすこし食べてみたいと思うようになったのではないでしょうか。もしそうでしたら、次回大きなシタビラメが釣れた際には、家に持ち帰ってぜひその味を確かめてみてください。
調理をする前にそのユーモラスな姿をじっくりと観察することもお忘れなく!
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