日本人にとって金魚と並ぶほどポピュラーな魚「コイ」。池や川には必ずと行っていいほど泳いでいますし、お城の堀などには赤白黒のキレイなコイが泳いでいることもありますよね。
今回は、そんなよく見かけるけど実はよく知らない魚「コイ」の生態や特徴、習性、釣り方についてご紹介します。後半では味や調理方法についても触れていますので、本記事を読めばコイとの距離がグッと縮まるはず!
コイってどんな魚?生態や特徴
分類:コイ目コイ科
コイの外見は同亜科異属のフナによく似ていますが、頭や目が体に対して小さく、吻(ふん)をより長く伸ばせます。また、上アゴ口角のあたりに一対の口ヒゲがあるのも特徴で、このヒゲで味覚や嗅覚を感知していると言われています。
体長は60cm程度ですが、環境によっては130cm以上に達することもあるようです。寿命は15〜20年と長い上に生命力が極めて強く、雑食性で口に入るものならば何でも食べてしまいます。
そんな日本中どこにでもいるコイですが、もともと日本に自然分布していた個体に加え、大昔に中国から移入されたことで全国的に広まったようです。
「鯉の滝登り」ということわざがありますが、これは中国の神話伝説に由来するもので、コイに滝を登る習性があるわけではありません。
コイの衝撃的な事実①胃がない
魚に限らず生き物ならば持っているであろう「胃」がコイにはなく、食道がそのままダイレクトに腸へとつながっています。そのため食いだめができず、常にエサをあさっていないと生命を維持できません。
こうした生まれつき胃がない魚は「無胃魚(むいぎょ)」と呼ばれており、コイの他にイワシやサンマ、金魚、フナ、トビウオなどが挙げられます。胃がないとはいえ、食道と腸の間に消化液を分泌する区間があるので、消化活動はきちんと行われているようです。
コイの衝撃的な事実②食材として優秀
観賞魚として馴染みのあるコイですが、実は食材としての歴史もある魚です。室町時代では武将の細川勝元がコイを絶賛しており、江戸時代では高級食材として将軍に献上されるほどでした。
というのも、コイはタンパク質やビタミン(B1・D・E)が豊富で、古来から「薬用魚」として重宝されています。日本最古の医学書といわれている「医心方」にも記載があるほどで、産後や病後の体力回復に最適な良質の栄養食品といえるでしょう。
コイの生息地は?日本では釣れる?
コイは比較的流れの穏やかな川や池、沼、湖から用水路まで広く生息しています。持ち前の生命力と雑食性で水質汚染にも強いため、日本中いたるところでコイの姿を目にすることができるのです。
近所に流れの穏やかな川や池があったら、コイが泳いでいないか確認してみましょう。覚えておくべきは、餌付けされていない野生のコイはあまり泳ぎ回らず、ゆっくりと回遊しながらエサを捕食します。
コイが目視できない、または水深があるエリアでは、コイを釣りたいならとりあえず仕掛けを投入してみるしかありません。ただし、場所によっては遊漁券が必要になるので、事前にきちんと調べておく必要があります。
コイ釣りの方法や仕掛け方法
コイ釣りはウキ釣り・吸い込み釣り・ヨーロピアンカープ・ルアー釣りが主流です。最も手軽にできるのが延べ竿を使ったウキ釣りで、反対にコストがかかるのはヨーロピアンカープとなっています。
ウキ釣り
延べ竿と呼ばれるリールのない竿に道糸をつなぎ、ウキと針をつけるシンプルなスタイルです。低予算で釣りができるので、初心者にもおすすめの釣り方となります。エサは専用の練りエサやふかし芋、魚肉ソーセージ、ミミズ、タニシなどを使用します。
吸い込み釣り
大物狙いの釣り方で、一般的なリール付きの竿を使用します。仕掛けはバネのような部分にエサをセットする吸い込み仕掛けを使用し、オモリは中通しタイプです。エサは撒き餌の役割もしてくれる練りエサがポピュラーですが、ふかし芋やミミズも使用します。
ヨーロピアンカープ
ヨーロッパで流行したスタイルで、バイトアラームや魚群探知機といったハイテク機器を使用するのが特徴です。リール付きの竿を使うのは吸い込み釣りと同じですが、仕掛けの種類が多く、エサを針下垂らすためのニードルという道具を使用します。
また、エサはボイリーやカープベイツと呼ばれる球状のものを使用します。
ルアー釣り
近年人気となっているのが、ブラックバスと同じようなルアー釣りです。コイというと餌釣りのイメージが強いですが、雑食性のためルアーでも問題なく釣れます。竿とリールは使用するルアーの種類に応じて選びましょう。
コイの味や調理法
淡水魚であるコイは、寄生虫がいたり臭みが強かったりするので、川や池で釣れたものは食材としてあまり適していません。しかし、食用として養殖されたコイであれば美味しく食べられます。
前述の通り「薬用魚」と言われるほど栄養が豊富な魚ですので、市場やお店で見かけた際はコイ料理にチャレンジしてみるのもいいでしょう。注意点としては、コイの胆のう(苦玉)には毒があるので、さばく際は潰さずに切り取る必要があります。
コイこく
筒切りにしたコイを、煮込んで味噌で味付けしたものがコイこくです。江戸時代に盛んだった調理法で、淡水魚特有の臭みを味噌がカバーしてくれます。コイ料理は鮮度が大事なので、地域によってはウロコや内蔵もそのまま煮込むようです。
- コイを筒切りにして鍋にいれ、酒と水を加えてアクを取りながらゆっくり煮ます。
- コイが柔らかくなったら砂糖とみりんを加え、水を足しながら骨が柔らかくなるまで煮込みます。
- 十分に柔らかくなったら醤油と味噌で味付けをし、落とし蓋をして汁がなくなるまで弱火で煮詰めましょう。
- 器に盛って完成です。
コイの洗い
コイこくと並ぶ代表的なコイ料理の一つで、生の切り身を氷水にくぐらせる調理方法です。コイの場合は臭みが強いので、一度温水に通してから氷水で冷やします。このひと手間を加えることで、コイ特有の脂っぽさや臭みを和らげることができます。
- コイを三枚におろし、そぎ造りにします。
- 切り身を温水(約65℃)にさっと通し、すぐに氷水に入れて冷やします。
- 水気をしっかり拭き取ったら、お皿に盛り付けて完成です。
酢味噌や梅しょう油でさっぱりいただきましょう。
コイのうま煮
コイを甘めの煮汁で煮込んだ料理で、脂のりがいいと口の中でとろけてあっという間になくなってしまいます。ちなみにコイが煮汁で浸っていればうま煮、うま煮より甘めの味付けで煮汁がなくなるまで煮詰めたものが甘露煮です。
- コイから胆のうを取り出して筒切りにします。
- コイの切り身がひたひたになるまで酒を入れ、さらに切り身の1~2cmほど上まで水を入れます。
- しょう油と砂糖を入れて、アクを取りながらゆっくり煮ます。
- 1時間ほど煮て煮汁に照りが出てきたら、器に盛り付けて完成です。
まとめ
観賞魚として身近なコイですが、実は栄養豊富で食べても美味しいとは驚きですね。川で釣ったコイをそのまま食べるのは少し気が引けるものの、養殖された食用のコイを見つけたらぜひともチャレンジしたいところ。
また、地域にもよりますがコイは一年を通して釣れてくれる魚ですので、他の魚が釣れない冬期でも狙える希少なターゲットです。冬の釣りは寒さとの戦いでもありますが、万全の防寒対策で臨んでみてはいかがでしょうか。
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