アゴヒゲがトレードマークで、正面から見るとまるで「オジサン」とも思える魚がヒメジです。近場の海で簡単に釣れることもあり、海釣り経験者では一度は釣ったことのある方も多いでしょう。しかし、ヒメジのことを深掘りし、詳しく調べることは少ないかもしれません。
本記事では、ヒメジについて、生態や特徴、また、ブランドヒメジ、そして釣り方の仕掛け、さらに料理方法まで詳しく解説します。ヨーロッパでは高級魚として流通している意外な一面もあるヒメジについて、詳しく知るきっかけになること間違いなしです。
ヒメジってどんな魚?生態や特徴
分類:スズキ目ヒメジ科
ヒメジはアジア東部や日本近海の浅場に生息する、赤っぽい色の海水魚です。種類によっては30cmを超える個体もいますが、概ね20cm位までで、大型に成長する魚ではありません。トレードマークの2対のアゴヒゲで、ヒメジと見分けることができます。
赤い色から「姫」を連想させ、「ヒメジ」になったとする説もありますが、定かでありません。日本では30種類以上存在するとされており、スズキの仲間といえるものの、釣りのターゲットであるシーバス(スズキ)とは生活する場所などが異なっています。
ヒメジはヨーロッパ沿岸でも食用として捕獲され、高級料理の食材として流通しています。特にフランスでは「Rouget(赤い色)」の名称で親しまれており、ムニエルやフライにして食されています。
ヒメジの生態や特徴
ヒメジは海底で生活する「底生魚」で、砂底を掘りもぐり込み外敵から身を守るのが特徴です。産卵期は、概ね夏期~秋期にかけてと言われており、生まれたばかりの稚魚は浅場にも出没します。しかし、冬期は深場で越冬するため、寒い時期の釣果は暑い時期より劣るようです。
ヒメジのアゴヒゲには味覚を感じ取る細胞が存在し、アゴヒゲを使い海底の餌を探しています。また、アゴヒゲには触覚もあり、濁りや暗さの中でも、アゴヒゲを使いながら、いわば「手探り」で餌を手に入れることが可能です。
オジサンとも呼ばれる魚
ヒメジの頭部を正面から見ると、まるでアゴヒゲをはやしたオジサンに似ており、オジサンと名づけられました。また、漢字では「叔父さん」「伯父さん」とも書くため、ヒメジは雄でも雌でもオジサンと呼ぶことになります。
ブランドヒメジとして、山口県萩市の「キンタロウ」が親しまれています。萩市沖の底引き網で捕獲された「キンタロウ」は、地元の居酒屋でも定番の魚料理のネタとなっており、「キンタロウ」の干物はお土産としても人気です。
ヒメジの生息地は?日本では釣れる?
ヒメジは北海道~沖縄にかけて、日本海・東シナ海・太平洋の沿岸部に広く生息しています。特に、鹿児島~沖縄の暖かい地方では、食用として流通しており、家庭の食卓でも馴染みの深い魚です。
ヒメジは浅場の海底に生息しているため、何かの釣りで偶然に釣れることがあります。海釣りで経験者であれば、かつて一度はヒメジの釣果のあった人は多いのではないでしょうか。いずれにしても、ヒメジは釣りやすい魚ともいえます。
また、ヨーロッパでは高級魚として市場で取引され、シーバスやイワシなどよりも高値がつきます。なお、ヒメジの英名は「goatfish」ですが、「goat」はヤギを意味しており、日本のオジサンと同様、ヒゲに由来し命名されているようです。
ヒメジ釣りの方法や仕掛け方法
ヒメジは底生魚のため、魚の特徴に合わせて釣りの方法を組み立てていきます。ヒメジは大きな群れを作り移動する、というより、小さな群れ、もしくは単体で餌を探して移動するのが特徴です。そのため、置き竿にして回遊を待つのが基本になります。
ヒメジ釣りには、置き竿でアタリを待つ、ブッコミ釣りがおすすめです。広範囲に仕掛けを投入する方法なら効率よくヒメジを狙えます。竿は3m位の投げ竿か、15号程度のオモリ負荷のあるシーバスロッドなどを使います。
3000番クラスのリールに、PE1.5号を150mほど巻き、ハリスはフロロの3号、針は丸セイゴの13号を使います。餌は青イソメや魚の切り身、貝のむき身などでよく、竿を数本出すと釣果のアップに繋がります。
南方のリーフ沿いでは、ヒメジのルアー釣りも行われています。ライトタックルで、身近な場所を探るのが特徴です。6ftのライトアクションロッドに、PE1号を100mほど巻いた2000番クラスのリールを使います。
ルアーは、小型のミノーや遠投の可能なメタルジグ、さらに、ワームなどにもアタックしてくるため、待ちの投げ釣りとは異なる、攻めの釣りを楽しめるでしょう。なお、ヒメジの居場所を探すため、釣り人は移動を繰り返す必要があります。
ヒメジの味や調理法
ヒメジはアゴヒゲなどの見かけの割にたんぱくで、臭みも少なく上品な味わいが特徴の魚です。透き通るような白身で、少し硬めの皮と身の間に、旨味のある脂が入っています。この特徴を生かし、調理するのがヒメジを美味しくいただくコツです。
また、ヒメジは大きめのウロコが特徴で、さばきやすい魚です。釣れた魚を持ち帰る際は、出来れば血抜きをしておき、クーラーで冷やしておくと鮮度を保てます。ウロコをはがし、内臓も現地でさばき持ち帰ると、自宅で台所の下処理は不要です。
ヒメジの刺身
もともとのヒメジの身を味わうには、刺身をおすすめします。ただし、南方で釣れたヒメジには、寄生虫がいないとも言えないため、十分な下処理と鮮度を保ち持ち帰るのが無難です。なお、魚に臭みを残さないため、魚をさばく際は内臓をあまり触らず、破らないようにして取り出しておきましょう。
シンプルな料理であるヒメジの刺身は、ほんのりとした甘味があり、地魚特有の臭みもなく、とても食べやすいのが特徴です。ただし、魚が大型ではないため、大きな刺身のサクはとれません。そのため、刺身を作る際は、身を少し斜めに細長く切るか、そぎ切りにすることをおすすめします。
また、ヒメジは刺身のほかに、寿司ネタとしても美味しくいただけます。もし、握り寿司を作るのが技術的に難しいようでしたら、焼きのりを使った手巻き寿司も美味です。皮目が鮮やかですので、皮を残して軽く火であぶる、焼き切りも試してみてはいかがでしょうか。
ヒメジの焼き物
ヒメジは皮目に厚さはあるものの、少し水っぽい肉質のため、焼き物にしても良いでしょう。塩焼きでは、下処理をすませた後、水気をよくふきとり、振り塩をします。焼く前に、ヒレに飾り塩をふっておき、ヒレが焦げないように焼くのがコツです。
ヒメジがたくさん釣れた場合、干物にし軽く火であぶって食べるのもおすすめです。干物はもともと保存食ですが、干していく過程で魚の旨味が凝縮されるため、塩焼きとは別の味わいを楽しめます。なお、干しすぎると身が固くなり食べづらくなるため、半乾燥の状態で仕上げる生干しが良いでしょう。
また、バター焼きもヒメジ特有の旨味を味わえます。ヒメジを3枚におろし水気を十分に取り除き、食べやすい大きさに切ります。切り身に小麦粉をまぶし、フライパンにバターを溶かし焦げないように火を通せば完成です。レモンとの相性も良く、さわやかな白身魚料理となります。
ヒメジの揚げ物
ヒメジは皮目に厚みが少々あるため、揚げ物にすると、皮がパリッと香ばしく仕上がります。揚げ物のコツは、揚げた後の油切れを良くすることで、皮目がさくさくし身はホックりとしたヒメジを楽しめます。
小さなヒメジは丸あげにしても良し、大きめのヒメジは開きにして天ぷらも良いでしょう。天ぷらを作る際は、骨を取った開きに軽く塩を振り水気をとります。冷水に卵と小麦粉を入れ、粉っぽさが少し残る位にかき混ぜます。
厚手の鍋に揚げ油を入れ、ヒメジの皮を下にして、静かに鍋に滑り込ませます。衣からでる揚げカスはこまめに取り除きましょう。衣から泡がでなくなったら、鍋から取り上げ油切りバットに立てかけます。冷めないうちに器に盛り付けてヒメジの天ぷらは完成です。
まとめ
本記事では、「オジサン」として親しまれているヒメジについて詳しく説明しました。日本では暖かい海域に生息していますが、ヨーロッパ沿岸にも生息し、現地では高級食材として知られています。
ヒメジは、主に投げ釣りで待ちの釣りが基本となりますが、白身のクセのない上品な味わいのため、釣れた場合は、ぜひ持ち帰り料理することをおすすめします。山口県萩市では「キンタロウ」と呼ばれ、地元の料理店では定番として供されています。
この記事をきっかけに、ヒメジ釣りとヒメジの料理を楽しんでみてはいかがでしょうか。
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