カワハギ釣りの定番外道として知られるトラギス。美味しく食べられる魚なのですが、餌取りとして厄介者扱いされるケースが多いです。見た目はハゼと似ていて可愛らしいので、お子様と釣りをする際は、鑑賞用としてバケツに入れておくのもいいでしょう。
今回は、そんなトラギスの生態や特徴、釣り方、そして味や食べ方について詳しくご紹介します。本命が釣れなくてもトラギスなら釣れるってことは多々あると思うので、たまには持ち帰って晩ご飯のおかずにしてみてはいかがでしょうか。
トラギスってどんな魚?生態や特徴
分類:スズキ目トラギス科
ハゼのような丸く細長い形をしており、赤褐色でエラから尾の付け根にかけて白い斑列があります。肉食性でエサに貪欲に食いついてくることから、カワハギやシロギス狙いの船釣りでは定番のゲストです。
一般的には甲殻類やゴカイ類を捕食していますが、20cmほどの大きい個体になると小魚も捕食するようになります。初夏になると産卵期を迎え、オスの縄張りにメスが入ってきてペアが成立すると産卵を行いますが、一定数のメスはその後オスへと性転換します。
地域によってニュウドウハゼ、ドウマル、オテッカンジイなどの別名があり、市場での流通量は多くありません。比較的浅い水域に生息していて、水温が上昇傾向にある4~11月によく釣れます。エラの先端に鋭いトゲがあり、毒性はないものの取り扱いには注意が必要です。
トラギスの性転換
魚の中には一生の間に性別が変わる種類がいて、トラギスもその中の一種類です。トラギスはメスからオスへ性転換することがわかっており、比較的大きいメスが産卵後にオスになります。
小さいメスが性転換しない理由は、オスに変わったあとの縄張り争いで負けてしまうからと言われています。自分の子供をより多く残すためには、小さいうちはメスとして卵を産み、大きくなって縄張りを持てるようになったらオスに変わるのが良いのです。
流通しないのはなぜ?
トラギスが市場にあまり流通しないのは、「美味しくないから」という理由ではありません。釣りにしても漁にしても、狙ったところで漁獲が見込めないというのが最大の理由です。
また、産地でごく僅かに扱われる程度なので、知名度がなかなか上がらないというのも理由の一つとなっています。もしもスーパーや鮮魚店の店頭に並んでいるのを見かけたら、トラギスを味わうチャンスなので積極的にチャレンジしてみましょう。
トラギスの生息地は?日本では釣れる?
トラギスはサンゴ礁海域をのぞく温海域に分布しており、海外では韓国南部、台湾、ジャワ島、日本では千葉県以南と新潟以南の海で釣ることができます。主な生息場所は沿岸部の浅瀬ですが、関東以北で見かける機会はほとんどありません。
トラギスを釣りで狙うなら、防波堤や砂浜(サーフ)から探してみましょう。砂底や小さな根があるポイントであればなお良いです。冬になると沖合の深場へ落ちてしまうため、おそくても11月頃までがシーズンとなります。
トラギスの多くは回遊はせず浅瀬に広く点在しているので、一匹釣ったら同じ場所へキャストするのではなく、少しずらすなどの工夫をしましょう。産卵期となる春から夏にかけては、同じポイントで複数釣れることもあるようです。
トラギス釣りの方法や仕掛け方法
まとまった釣果が狙えないとはいえ、トラギスを狙って釣り上げる方法はいくつかあります。一つ目はカワハギやシロギスと同じ投げ釣り、もう一つはアジングやメバリングタックルを流用したルアー釣りです。
投げ釣り
シロギス釣りで用いるのと同じ天秤+枝バリ仕掛けに、イソメなどの虫エサをつけてキャストします。エサを貝にすると、アタリはあってもなかなか口に入らないのでおすすめしません。アプローチはボトムをズル引きするだけです。
根があるエリアではジェット天秤に変えてズル引きをやめ、着底後に数分おいてアタリがなければすぐ回収します。回収とキャストを繰り返し行い、広範囲を効率よく探ることが釣果アップへの一歩です。
ルアー釣り
サーフやサーフに隣接する堤防、漁港内ではライトゲームタックルを流用してルアー釣りでチャレンジしてみましょう。小さめのフック(#14前後)がついたジグヘッドにワームをセットしたら、あとはボトムをズル引きするだけです。
ワームはパワーイソメなどのニオイ付きを利用すると効果的で、カラーは赤系のチョイスをおすすめします。投げ釣りと比べて探れる範囲は狭まりますが、手返しの良さを活かしてランガンすれば、トラギスとの遭遇率を上げられるでしょう。
トラギスの味や調理法
トラギスは大きくても約20cmほどと小さな魚なので、お刺身はもちろん三枚おろしにするのすら不向きです。手間ばかりかかるので、数釣りができた場合のみお刺身にチャレンジするといいでしょう。
身はクセのない淡白な白身ですから、大抵の調理方法と相性がいいです。背開きか腹開きにしておけば、様々なアレンジで美味しく食べられます。今回は特におすすめの天ぷら、開き干し、煮付けの3品をご紹介します。
天ぷら
トラギスの一番美味しい食べ方といえば、やはり天ぷらです。淡白な白身は天ぷらにするとフワフワ絶品で、一度食べたら病みつきになります。トラギスの味を堪能するなら、揚げたてアツアツのところに塩をつけていただきましょう。
- トラギスのウロコと頭を取り、内臓をかき出して氷水に落とす
- キッチンペーパーで水気をよく切ったら背開きにして、腹骨をV字にすく
- 臭みをとるため、塩を振って30分ほど置く(水分が出たら拭き取る)
- 水溶き片栗粉につけたら油で上げ、パチパチ音が小さくなったら取り出す
- 器に盛り付けて完成
③の塩を振る際に、少し多めに振っておくとそのまま食べられます。揚げることで小骨が気にならなくなるので、トラギスが釣れたらぜひお試しください。
開き干し
小さなトラギスは、下処理が細々していてとても面倒くさいです。釣ったはいいものの気分が乗らない、そんな時は一気に腹開きにして干物にしてしまいましょう。淡白な白身も干すことで旨みがしっかり凝縮し、ご飯のおかずにはもちろんお酒のアテとしても優秀です。
- トラギスのウロコを落とし、腹開きにして内臓を取る
- 塩水に30分ほどつけたら、キッチンペーパーで水気を拭き取る
- 好みでお酒やしょう油をハケ塗りして、風通しの良い場所で3時間~半日干す
- 表面の水分が飛んだら、皮目を下にしてオーブンまたはトースターで焼く
- 器に盛り付けて完成
サイズが小さいので2~3匹ほど食べないと満足感は得られませんが、あまりの美味しさにきっと驚くはずです。干しすぎると固くなってしまうので、触ってみて多少柔らかくても、表面の水分が飛んでいれば大丈夫です。
煮付け
小鉢にピッタリなトラギスの煮付けは、いつもの食卓を料亭気分に変えてくれます。開いた状態でそのまま煮付けてもいいですが、小鉢用にあらかじめ半分にカットしておくのもいいでしょう。
- トラギスのウロコと頭を取り、内臓を取って開くか3枚おろしにする
- 流水で一度洗ったら、キッチンペーパーで水気を拭き取る
- 水と酒を100ccずつ、しょうゆとみりんを大さじ3ずつ、砂糖大さじ2を鍋に入れる
- 煮汁が煮立ったらトラギスの身を入れ、落としぶたをして10分ほど煮る
- 器に盛り付けて出来上がり
ボリューミーなメインと上品な小鉢がある夕飯、想像しただけで最高ですね。味をしっかり染み込ませたいなら、煮ている最中に時おり煮汁を回しかけてあげましょう。
まとめ
西日本で釣りをしないとなかなかお目にかかれないトラギスですが、もしも西日本に住んでいて、しかも近くに海があるなら大チャンス。仕掛けとエサを用意して、早速釣りに行ってみましょう。
また、たとえ本命がカワハギやシロギスだったとしても、トラギスは本当に美味しい魚なので、たまには持ち帰って食べてみてくださいね。天ぷらや干物の味を知れば、きっと今度から持ち帰ろうって気持ちにさせてくれるはずですよ。
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