柔らかくて上品な味の白身魚『タラ』。冬のお鍋の定番具材として、私達日本人にはとても親しみのある魚です。タラは一般的に漁でしか獲れないと認識されていますが、実は北日本では冬の釣りのターゲットとして人気があります。
今回は、そんな釣って楽しく食べて美味しいタラの生態や特徴、釣り方についてご紹介します。後半ではおすすめの食べ方についても触れているので、この機会にタラについての知識をさらに深めてみてはいかがでしょうか。
タラってどんな魚?生態や特徴
分類:タラ目タラ科
『タラ』はタラ目タラ科のうち、タラ亜科(11属23種)に所属する魚の総称で、日本近海にはマダラ・スケトウダラ・コマイの3種類が分布しています。私達がタラと呼ぶのは、マダラであることが多いです。
タラは肉食性で、主に水深200mほどの深海で群れを形成して生息しています。なかには季節によって生息深度を変えたり、大規模な回遊を行う群れもあるようです。背中側が灰色や褐色なのは、水底に紛れるための保護色になっていると考えられています。
タラの旬は1~2月の寒い時期で、これは産卵期が冬期から早春であるためです。寒さが厳しい季節に穫れる通称“寒ダラ”は身がしまっているだけでなく、オスにはたっぷりの白子があります。産卵期が終わると白子の量は減り、水っぽくなってしまいます。
タラは成長が早く寿命が長い
タラは大型の個体だと体長1m以上、体重12kg以上にもなります。それだけ大きくなるためにはある程度長い年月を生きる必要があり、タラの寿命は13~14年ほどと魚の中でも長いです。
また、寿命が長いだけでなく成長が早いのも特徴で、卵から生まれて1年で約15cm、2年で約20cmとなり、そこから急成長して3年で約50cm、5年で約60cmにまで成長します。
80cm以上の個体は8歳以上と推測され、1m超えの個体は10歳以上の猛者と考えていいでしょう。
地域にる呼称の違い
私達日本人にとって身近な魚であることを裏付けているのが、地域によって変わる呼称です。
- 北海道:タチ、マダチ
- 青森県:アブラ、イリダラ、チュウ、タチ、デタラ、ホンダラ
- 秋田県:タチ、タツ
- 山形県:アマコダラ、
- 宮城県:キクコ
- 富山県:イボダラ、コボダラ、マイダラ
- 東京都:クモコ、マダラコ
なかにはタラ本体ではなく白子のみを呼ぶものもありますが、これだけ多くの呼称があるのはおそらくタラだけでしょう。
タラの生息地は?日本では釣れる?
日本近海におけるタラの生息地は、主に北太平洋の深海です。他には北緯35度より北の日本海やオホーツク海にも生息しており、まれに温帯や汽水域に入る群れもあります。
三陸沿岸では冬の船釣りのターゲットとして定番ですが、3月を過ぎると漁港やサーフから狙うことも可能です。
基本的には冷たい海に分布している魚なので、北太平洋沿岸では一年を通して釣れる可能性があります。カレイやアイナメ狙いの昼釣りの外道として釣れることもあるほか、回遊次第にはなりますが漁港内での釣果も確認済みです。
とはいえ、ショア(陸)から狙えるのはある程度水深があるエリアのみなので、やはり船に乗って沖にあるポイントまで行くほうが釣れる確率は高いでしょう。
タラ釣りの方法や仕掛け方法
タラは船と陸の両方から狙える魚です。船では胴付き仕掛け、シャクリ釣り、ジギングで釣ることができ、陸からは投げ釣りが有効です。一般的なのは胴付き仕掛けを使った餌釣りですが、近年ではルアーを使ったジギングも人気があります。
胴付き仕掛け(船)
イカ、カツオ、サンマ、サバといったエサを短冊切りにして、胴付き仕掛けにつけて海底を探るです。オモリは300~350号を使用し、オモリが底を叩く状態でアタリを待ちます。アタリは明確で力強いため、向こうアワセで針がかりします。
シャクリ釣り(船)
北海道で行われているユニークな釣り方で、シャクリ棒と呼ばれる棒状の鉛に針がついた擬餌針をシャクってタラを誘います。シャクリ棒を着底させたあと、数mほど巻いたらひたすらシャクり、アタリがあったらしっかりフッキングさせます。
ジギング(船)
300~500gのメタルジグを底まで落とし、大きく持ち上げたあとテンションを抜くようにストンと落としてアタリを待ちます。タラはフォール中に食ってくることが多いので、アタリがあったら素早く糸ふけを取ってアワセを入れます。
投げ釣り(陸)
産卵を終えて浅場に来たタラを狙うもので、旬より少し遅い2~4月に三陸沿岸の少し水深がある防波堤周りがポイントとなります。エサはイソメやイカを房掛けにして、投げた後は定期的に打ち返して、タラのアタリが来るのを待つだけです。
タラの味や調理法
魚特有の風味や臭みがほぼない淡白なタラの身は、そのまま焼いて食べてもモノ足りなく感じる方が多いでしょう。反対に多くの食材と合わせやすく、とりわけバターとの相性は抜群に良いです。
タラのバター醤油ムニエル
魚嫌いのお子様にもぜひ試して欲しいタラのムニエルは、バター醤油でコクをプラスすることでさらに美味しくなります。大人はレモンを絞ってあげると、酸味がとてもいいアクセントになってくれるのでおすすめです。
- タラの切り身に塩コショウを振ったあと、片栗粉を両面にまぶす。
- 温めたフライパンにバターを入れたら、弱火で両面をじっくり焼く。
- タラに焼き目がついたら端に寄せ、醤油大さじ1を加えて全体に馴染ませる。
- 器に盛り付けて完成。
ホウレン草や小松菜を一緒に炒めて、タラの横に添えると彩りがよくなります。
タラのトマト煮
淡白なタラの身は、トマトの酸味とも相性が抜群。玉ねぎやパプリカ、マッシュルームなどを入れた自家製トマトソースで煮込めば、ご飯のおかずとしてはもちろん、お酒のおつまみにもおすすめの一品ができあがります。
- タラの切り身の両面に塩を振り、冷蔵庫で10〜15分ほど寝かせて馴染ませる。
- にんにくをみじん切りに、玉ねぎを5mm幅のスライスに、マッシュルームは4等分に切る。
- パプリカやにんじんなど、入れたい野菜がある場合も切っておく。
- タラを流水で洗ったあとしっかり水気を切り、両面に薄力粉をまぶす。
- あたためたフライパンにオリーブオイルをひき、タラの切り身の両面がキツネ色になるまで焼いたら一度取り出す。
- 余分な油を拭き取り、新たにオリーブオイルを引いて、みじん切りにしたにんにくを香りが立つまで弱火で炒める。
- カットした野菜を入れて、しんなりするまで炒める。
- カットトマト缶とマッシュルーム、白ワイン大さじ2を入れ、中火でひと煮立ちさせる。
- タラを戻し入れ、塩コショウで味を整えたら、器に盛り付けて粉チーズとパセリをかけて完成。
自家製フィッシュバーガー
タラフライにたっぷりのタルタルソースをかけて、フワフワのバンズで挟むだけのお手軽料理です。お好みでレタスやトマトのスライスを挟んであげれば、高級フィッシュバーガーの出来上がり。
- タラの切り身に塩を振り、10〜15分ほど常温で寝かせて馴染ませる。
- 薄力粉、卵、パン粉で衣をつけたら、160℃の低温でじっくり揚げる。
- バンズにマヨネーズを薄く塗り、レタスやトマトを載せ、揚げたてのたらフライを乗せる。
- たっぷりのタルタルソースをかけたら、バンズを乗せて完成。
まとめ
強烈なアタリと力強いヒキで多くの釣り人を夢中にさせてくれるタラは、釣ったあとも様々な料理に形を変えて私達の味覚を楽しませてくれます。
お鍋やムニエルが定番ですが、今回ご紹介したトマト煮やフィッシュバーガーもおすすめなので、機会があったらぜひ試してみてくださいね。
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