磯釣りの対象魚の中で、大型魚であるクエを、メディアで見ることも多いでしょう。クエは大きな口で獲物を狙い、猛烈なパワーで根に向かって突進します。大物釣り師を熱狂させてやまない、磯の王者、クエ。
ここでは、クエの生態や特徴、そして釣り方と料理などを解説します。特にクエは高級魚として知られ、大型になると1匹数十万円という値がつき、庶民の口には、なかなか入ることがありません。幻とも呼ばれるくえについて、ここでは詳しく解説します。
クエってどんな魚?生態や特徴
分類:スズキ目スズキ亜目ハタ科
ハタの仲間は数多くいますが、その中でも大型になるのが「クエ」です。大型になると1mを超え、重さは60kgを越す個体もいます。体側に独特の縞模様がありますが、老成の個体では消失するのが特徴です。
鋭い歯の並ぶ大きな口は、30cm位の魚であれば、一口で食してしまいます。回遊魚と異なり、敏捷に泳ぎ回る魚ではないので、餌を捕りやすい大きな口を持っているのでしょう。クエの寿命は、天然で約20年以上、飼育下では約30年以上にもなります。
また、クエは大型になるものの、成長が遅く個体数も少ないため、市場では1kg当たり1万円を超えて取引されることがあり、まさに「幻の魚」です。一方、最近では養殖技術も発達し、以前よりは「幻の魚」を食する機会が増えつつあります。
クエの生態や特徴
典型的な暖流系の魚で、黒潮の影響を受ける沿岸部に生息しており、適水温は20度前後です。クエは岩礁地帯で根の荒い場所を好み、他の磯魚と比べると定着性が高く、普段は穴ぐらを中心に生活しています。概ね、夏場に産卵します。
クエが住み家からいなくなると、別のクエがやって来て住み着くともいわれ、一度クエが釣れた場所は、日にちを開けると別のクエが釣れることが特徴です。そのため、以前はクエ釣り師は釣り場を簡単には教えないともいわれてました。
夜行性とはいえ日中に活動する個体もいる
クエは、夜行性の魚と言われており、日中は住み家となる穴ぐらや岩陰でじっとしています。暗くなると住み家から出て、広範囲に動きの鈍くなった小魚を捕食します。そのため、一部の釣り師の間でクエは「暗黒の帝王」とも呼ばれていました。
しかし、潜水した人により昼間に穴ぐらから出て、餌を追うクエを目撃した、との情報により、場所によっては日中に狙えるようになりました。クエは夜行性の定着魚が特徴ですが、日中も活動することがあり、釣り師にロマンを与える魚ともいえます。
クエの生息地は?日本では釣れる?
クエは暖流系の魚であるため、主に関東より西の海域に生息しています。適水温が20度前後のため、この海水温によって釣れず時期が異なります。日本では、多くの地域は6月~10月までがシーズンといえますが、南に行くほど釣り期は長くなります。
また、クエの呼び名は、関東ではモロコ、関西ではクエ、九州ではアラです。沖縄ではミーバイとも呼ばれ、各地で釣り人を楽しませています。また、希少性と食味の良さから各地で高値で取引され、食通を楽しませています。
ハタの仲間は、海外の分布も幅広く、台湾、香港、東南アジア、さらにインド洋、オーストラリアでも釣りの対象魚とされています。南に行くほど魚体は大型化し、ハタ類で最も大きくなる「タマカイ」は2mを超える個体も確認されています。
クエ釣りの方法や仕掛け方法
磯でクエを釣る場合、まず過去に実績のある釣り場を選びます。クエ釣りでは、竿下が切り立った急深の磯がポイントとなり、竿を出す場所に、先の釣り人のボルトやアンカーの穴が残っていることも多いようです。
また、夜間の釣行が主となるため、取り込みや危険性を考えると、数人でパーティーを作ると万全です。夜釣りに必要な照明はもとより、大型のクーラーなど、通常の磯釣りをさらに大がかりにした釣りとなります。
仕掛けは捨ておもり式のブッコミ釣りとすると根がかり対策となります。クエは餌を口に入れると、猛烈なパワーで根に潜ろうとし、1度根に潜ると簡単には出てこないため、餌は海底から少し上を切った状態にします。
竿はクエ竿、ベイトリールに80号以上のラインを巻き、瀬ずれワイヤー30番を約1m、ハリスワイヤー30番を約1m、捨て糸ナイロンかフロロ10号を1.5mほど取ります。餌は、サンマやイワシ、アジ、イカなどを使います。
クエの前あたりは小さく、モゾモゾとしたあたりが続いた後、一気に剛竿を絞り込むような本あたりがあります。最初の引き込みはものすごいものがあり、一気に底から離したら、途中の岩の隙間などに入らないよう、力いっぱいファイトを続けます。
クエの味や調理法
クエは1匹さばくと刺身が100人前は取れる、とも言われ、通常の家庭の料理法では通用しません。大型の業務用まな板を家庭で持っている方は少ないため、大型の板かベニヤ板などが適しているほどです。また、ウロコはとらずに、尾から頭にかけて包丁で皮を取り、すき引きをします。
一般的な魚より硬い特徴があるため、魚をさばく際は手袋をするなど、怪我には注意が必要です。なお、クエは捨てるところがなく、エラや内蔵など、きれいに水洗いし湯引きして食せます。1匹のクエからはたくさんの身が取れるため、さまざまな料理に使ってみることをおすすめします。
クエ鍋
クエ料理で最も知られているのは、鍋料理です。九州の、あら鍋とも呼ばれ、冬の鍋物として知られています。まず、ウロコと頭、はらわたを取り、軽く水洗いします。扱いやすい大きさにサク取りし、切り身を作ります。
切り身をざるにならべ、熱湯をかけアク抜きし、冷水をくぐらせると身がしまり、魚の具材の準備完了です。鍋を準備し、水を3分の2ほど入れ、鍋の底に昆布を敷きます。好みもありますが、塩味を強めに、しょうゆを少なめに味付けするとよいでしょう。
鍋の湯が沸騰してきたら、具材となる豆腐や野菜を入れてフタをし、再度煮立てます。具材に火が通れば完成で、具と汁をいっしょに小皿にとり、やくみを入れてポン酢で食すると美味です。残った汁に、うどんやもちを入れると美味しくいただけます。
クエの刺身
すき引きで皮を落としたクエを3枚におろします。クエの身は白身で硬さがあるため、薄造りにします。3枚におろした身を、頭側から薄くそぎ切りにし、丸皿に円状に並べて盛り付けます。レモンや大葉をそえると見た目も鮮やかです。
また、クエの身は湯引きにしても美味です。3枚におろした身を、頭側から少し長めに切り、熱湯をくぐらせ氷水で冷まします。水気をキッチンペーパーでよく取り除き、皿に盛り付け、ポン酢や刺身しょうゆでいただきます。
刺身用のさくが残った場合、握り寿司もおすすめです。米は洗い水が透き通るまでとぎあげ、ざるにあげ、水気を切ってから炊きます。炊きあがったら適量の酢を混ぜて寿司飯をつくり、左手にクエのすしのたねを乗せ、右手で寿司飯を軽く握り左手のたねにのせ、軽く握ります。握り寿司が難しいときは、手巻き寿司にしてもよいでしょう。
クエのあら煮
脂の乗ったクエのあらは、煮つけにも向いています。まず、頭、中骨、残り身などを良く洗い、食べやすい大きさに切り分け塩をふります。少々時間をおいた後、熱湯を回しかけ、身についている汚れや血合などをきれいに取り去ります。
そして、冷水にさらし、水から取り上げ水気をよく切ります。鍋にだし汁と調味料(酒、砂糖、しょうゆ、みりん)などを加え、煮立ててから魚を入れます。火加減は中火で落しぶたをすると、身にまんべんなく熱と調味料が回ります。
5分ほど煮た後、薄切りのしょうがを加え、さらに煮詰めていきます。ときどき、おたまで煮汁を回しかけ、煮汁が煮詰まってきたら少し冷ますのがコツです。煮汁に出たうま味は、温度が下がると身に戻るといわれます。
まとめ
ここでは、磯釣りの中でも大型魚とされるクエについて、その生態や特徴、そして釣り方や料理方法などを解説しました。磯釣り師には「夜の帝王」とも呼ばれ、夜釣りが中心となります。日中でも釣れるポイントがあるものの、簡単には釣れないためベテランとの釣行をおすすめします。
また、釣り道具は頑丈で高価なものも多く、一式揃えるのにそれなりの出費を伴います。さらに、クエは高値でとりひきされるため、家庭料理の食材としては入手が難しく、釣って食するまで簡単とはいえません。しかし、クエを1匹釣れば、釣りの一生の思い出となり、さらに、さまざまな料理を楽しめます。この記事をきっかけに、クエ釣りを楽しんでみてはいかがでしょうか。
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