みなさんは、アサバガレイ(浅羽ガレイ)という魚をご存じでしょうか?その名前から何となくカレイだと想像はつくと思いますが、そんな魚は見たことはないし、食べたこともないと思っている方がきっと多いと思います。
ですがそんななじみの薄いアサバガレイは、意外にも多くの日本人がお世話になっている可能性のある魚なのです。
今回はそんなちょっと謎めいたアサバガレイについて、生態や特徴のほか、釣り方、調理方法についてご紹介したいと思います。この記事を読んだあと、「すごいな、アサバガレイ!」と少しだけ驚くかもしれませんよ。
アサバガレイってどんな魚?生態や特徴
分類:カレイ目カレイ科
アサバガレイとはカレイ目カレイ科カレイ亜科シュムシュガレイ属の魚です。体形は一般的なカレイと同様に平たく上から見ると木の葉型をしています。体高(背ビレ-尻ビレ間の長さ)が体長の半分以上あり、体のサイズに対して頭と口が小さいのが特徴です。
成魚の体長は30cm前後が一般的ですが、なかには40cmを超えるものもいます。目の位置は右側で、体色は有眼側が茶色や暗褐色のものが多く、無眼側は白色を呈しています。
砂泥質の海底に生息しており、ゴカイ類やエビなどを捕食します。大陸棚と大陸斜面の上部を季節回遊するとされており、夏場は餌を求めて水深20~100メートルの浅海で生活しますが、冬場は越冬と産卵のために水深50~300メートルの深場へ移動します。
産卵期は12~3月前後で、この時期になると海底の砂利や小石に粘着性のある卵を産み付けます。成長がとても遅く、雄は6~9歳(体長25センチ前後)、雌は12~24歳(体長32センチ前後)で成熟。寿命は10~20年といわれています。
同族はシュムシュガレイ
アサバガレイが属するシュムシュガレイ属にはほかにシュムシュガレイ(和名:占守鰈、英名:northern rock sole)がいます。アサバガレイよりも北の寒い地域に生息しており、アメリカ(アラスカ)、カナダ、ロシアで多く漁獲されています。
見た目や味がアサバガレイにとてもよく似ていることから、アメリカ産のアサバガレイとして日本でも多く流通しています(冷凍の子持ちカレイの切り身が有名)。日本のアサバガレイよりも安価で大量に輸入されることから、近年存在感を増しています。
全国の食堂や居酒屋などの飲食店のほか、冷凍総菜やレトルトの具として、このシュムシュガレイが使われている例があるようなので、もしかすると知らず知らずのうちにみなさんも口にしているかもしれません。
マガレイとの違いは側線の有無
アサバガレイは同じカレイ科の魚であるマガレイと見た目がたいへんよく似ています。体高の幅や、ウロコの大きさや形状で見分けられるというベテラン釣り師もいますが、見慣れていない人が判別するのはほぼ不可能だといっていいでしょう。
ですがそんなベテラン釣り師以外の人たちでも、ここさえ見れば簡単に見分けられるというポイントがあります。そのポイントとは「側線(そくせん)」です。側線とは魚が水中で水圧や水流などの変化を感じるための感覚器官のことです。
アサバガレイとマガレイを含むすべてのカレイには、エラの後ろから尾ビレに向かって伸びる側線があります。ところがアサバガレイ(シュムシュガレイ属)だけには、上の図のようにエラから前に向かって伸びて途中で二股に分かれる別の側線があります。
もし自分が釣りあげたカレイがアサバガレイかどうか迷ったときには、この第二の側線があるかどうかを確かめてみてください。
アサバガレイの生息地は?日本では釣れる?
アサバガレイは、福島県以北の太平洋沿岸、富山県以北の日本海沿岸、北海道全域、オホーツク海南部、千島列島周辺および、朝鮮半島の東部沿岸などが主な生息地です。大陸棚と大陸斜面の上部、水深20~300メートルの海底付近に生息しています。
国内での主な産地は北海道で、沿岸での底引き網や刺し網漁で多く漁獲。北海道の太平洋側では11~3月、日本海側では9~11月が主な漁期となっています。この他にも千島列島周辺で操業される遠洋底引き網漁でもアサバガレイは多く漁獲されています。
同じカレイ類のなかでも漁獲量がとても多く安価なため、日本各地で多く流通。各種飲食店などで総菜用として多用されています。
また、一般のレジャーとしての釣りでは、東北や北海道の沿岸(堤防、船)でアサバガレイ釣りは楽しまれており、とくに北海道ではほぼ一年を通して釣りが楽しめます。
アサバガレイ釣りの方法や仕掛け方法
アサバガレイは北の寒い地域にすむ魚です。主に北海道や東北で釣ることができますが、あまりこの魚を目当てに釣りをするという魚ではありません。カレイ科の人気御三家であるマガレイ、マコガレイ、イシガレイ狙いの外道として釣れる魚だといえます。
このためアサバガレイを狙う際の仕掛けや釣り方は、上記のカレイたちを狙うときのものと全く同じです。彼らの住みかである海底が砂や小石でできたポイントを堤防や船から狙う釣り方が一般的です。
以下に、初心者でも楽しめるアサバガレイ釣りの方法を2つご紹介します。
〇カレイのチョイ投げ釣り(堤防)
これはスピニングリールを使った投げ釣りのひとつです。通常の投げ釣りでは仕掛けを50~100メートルほど遠投する必要がありますが、この釣りでは初心者でも簡単に届く20~30メートル先の沖合を狙います。
チョイ投げ釣りで釣果をのばすコツは、目の前のポイントを広く探ることです。仕掛けを投げ入れたら、その場にずっと放置しておくのではなく、ときどきリールを巻いて魚に餌の存在をアピールしながら手前まで引いてきてください。
もしこれで反応がなかった場合は、最初に投げた方向から少しずらして仕掛けを投入します。より広い範囲を探ることで魚との遭遇確率がグッと上がります。
初心者におすすめのチョイ投げ釣り用の基本タックル(堤防用)
- 釣り竿:2~3メートルの万能リール竿
- リール:スピニングリール(2000~3000番)
- ライン:ナイロンライン 2~3号 100メートル以上
- 仕掛け:市販のチョイ投げ釣り用のセット仕掛け(片テンビン付き)がおすすめ
- エサ:アオイソメ、ジャリメ、ゴカイなど
〇カレイの小突き釣り(船)
これは船からカレイを狙う際の定番といえる釣り方のひとつです。仕掛けを海底まで落としたら、竿を小刻みに上下させて、オモリで海底をトントンと小突いてやります。すると餌が上下する動きと音に引き寄せられてカレイたちが集まってくるという仕掛けです。
オモリには集魚効果を高めるために、オレンジ色の蛍光塗料を塗ったものや、キラキラ光るホロシールを貼ったものなどが使われます。針は2~3本の枝針で使うことが多く、一度に2~3匹の多点掛けを狙うのがこの釣りの一番の醍醐味だといえます。
初心者におすすめの小突き釣り用の基本タックル(船用)
- 釣り竿:2メートル前後の船用の両軸リール竿(穂先が柔らかい先調子のもの)
- リール:小型両軸リール(手返しのいいハイギアタイプがおすすめ)
- ライン:PEライン 2~3号 150メートル以上
- 仕掛け:市販の船カレイ(小突き釣り)用のセット仕掛けがおすすめ
- オモリ:カレイ小突き釣り用シンカー(蛍光、夜行、ホロタイプのもの) 30~40号
- エサ:アオイソメ、ジャリメ、ゴカイなど
アサバガレイの味や調理法
アサバガレイは味が淡泊でクセがないことから、少し濃い目の味付けで調理すると美味しくいただけます。調理の際には、臭みの原因となる体表のヌメリや血合いを、下処理の段階でしっかり取り除くことをお忘れなく。
産地や大都市以外の地域では、生のアサバガレイを手に入れるのは少し難しいかもしれません。そんなときは国内で多く流通している冷凍モノ(日本産、アメリカ産問わず)をぜひ活用してみてください。季節に関係なく鮮魚より安く購入できますよ。
以下にアサバガレイをおいしくいただける調理法を3つご紹介します。
アサバガレイの煮付け
淡泊なアサバガレイは、甘辛い煮付けにするととても美味しくいただけます。もし生のアサバガレイが手に入らないときは、冷凍モノの切り身でも構いません(子持ちのものが特におすすめです)。
材料(2人分)
- アサバガレイ 1枚
- 水 200ml
- しょうゆ 大さじ3
- 酒 大さじ2
- みりん 大さじ2
- 砂糖 大さじ1
- 薄切りショウガ 1かけ(4~5枚)
アサバガレイの煮付けの作り方
下処理
①包丁か金タワシを使って両面のウロコとヌメリを取る。
②包丁で頭と内臓、尾ビレを取り除く。卵が入っている場合は傷つけないように注意する。
③腹の中を水洗いしたら、食べやすい大きさに2~3等分する。
④フライパンでお湯(60℃ほど)を沸かしたら、③を入れてカレイのヌメリや血合いを洗い流す。
⑤キッチンペーパーで余分な水分を拭き取ったら、表の皮目の部分に包丁で×印の切れ目をいくつかいれる。
調理
⑥鍋に水、しょうゆ、酒、みりん、砂糖、薄切りショウガを入れたら、強火にかけて煮立たせる。
⑦鍋に⑥を入れて沸騰したらあくをとり、落し蓋をのせたら中火で15分ほど煮る。
⑧落し蓋を取りのぞいたら、鍋を少し傾けて煮汁をスプーンですくい、魚の上からまわしかける。
⑨お皿に盛り付けたらできあがり。
アサバガレイのから揚げ
サイズがすこし小さく、煮付け用として使うにはちょっと物足りないというアサバガレイを調理するなら、骨まで食べられるから揚げがおすすめです。
ご飯のおかずとしてはもちろん、酒のつまみにもピッタリですよ!
材料(2人分)
- アサバガレイ 小さめのものを2枚
- 塩 適量
- コショウ 適量
- かたくり粉 適量
- サラダ油 適量
アサバガレイのから揚げの作り方
下処理
①包丁か金タワシを使って両面のウロコとヌメリを取る。
②包丁で頭と内臓、尾ビレを取りのぞく。
③腹の中を水洗いしたあと、キッチンペーパーで余分な水分を拭き取る。
④アサバガレイ(表面)の中心を走る側線に沿って縦に包丁を入れる。そのあと中骨に沿って包丁を入れて左右に開く。
⑤④と同じ要領で裏面も左右に開く。
調理
⑥⑤の両面に塩とコショウをふり下味をつけたら、全体にまんべんなくかたくり粉をまぶす。揚げむらにならないように薄く均一につけること。
⑦フライパンにサラダ油を入れて160℃に熱したら、⑥を入れて揚げる。
⑧しばらくすると油がパチパチと跳ねる音と、出る泡の勢いが小さくなるので、これを確認したあとに油から取り出す。
⑨お皿に盛り付けたら出来上がり。スライスしたレモンを添えてお召し上がりください。
アサバガレイのムニエル
味が淡泊なアサバガレイを濃厚なバターソースで召し上がってください。酸味で味を引き立ててくれるレモンの用意もお忘れなく。
材料(2人分)
- アサバガレイ 1枚
- 塩 適量
- コショウ 適量
- 小麦粉 適量
- バター 50g
- きざみパセリ 適量
- 絞りレモン 適量
アサバガレイのムニエルの作り方
下処理
①包丁か金タワシを使って両面のウロコとヌメリを取る。
②包丁で頭と内臓、尾ビレを取りのぞく。
③腹の中を水洗いしたあと、キッチンペーパーで余分な水分を拭き取る。
④アサバガレイを5枚におろす。ムニエルに使うのは表と裏の4枚のフィレ。包丁で食べやすい大きさに切り分ける。
調理
⑤両面に塩とコショウをふったら冷蔵庫で30分ほど寝かせる。水分が出るのでキッチンペーパーで拭きとる。
⑥小麦粉を両面にしっかりとつける。焼きむらにならないように薄く均一につける。
⑦フライパンを中火にかけ、そこにバターを入れる。溶けたバターが焦げないように注意する。
⑧フライパンに⑥を入れて、溶けたバターの中で炒める。
⑨焼き色がついて半分ほど火が通ったら裏返してさらに炒める。溶けたバターをスプーンで上からまわしかけることを忘れずに。
⑩⑨をお皿に盛り付け、上からきざみパセリと絞りレモンを振りかけたら出来上がり。
まとめ
今回は知名度はありませんが、多くの日本人がお世話になっているアサバガレイ(浅羽ガレイ)について、生態や特徴のほか、釣り方や調理法などについてご紹介させていただきました。
アサバガレイは、同じカレイ類のなかでも漁獲量がとても多く安価なため、全国の飲食店で多く食べられていたとは意外でしたよね!私たちの食生活を陰から支えてくれていたすごい存在だったのです。
次回、飲食店や居酒屋などに出かけた際には、店員さんに「アサバガレイ使ってますか?」とぜひ聞いてみてください。この魚をより身近に感じられるかもしれませんよ。
コメント