特徴的な風貌のマトウダイは、釣りをするしないに関わらず、なかなかお目にかかれない魚です。もしも市場や魚屋さんで見かけたなら、それはマトウダイを味わう千載一遇のチャンス!見た目に惑わされず、思い切ってチャレンジしてみましょう。
今回は、そんなマトウダイの生態と特徴、釣り方やおすすめの料理方法をご紹介します。ショア(陸)からの釣りしかしない方は出会う機会こそ少ないものの、マトウダイの釣果が聞こえる地域で釣りができるのであれば、狙ってみるのも面白いかもしれません。
マトウダイってどんな魚?生態や特徴
分類:マトウダイ目マトウダイ科
マトウダイは頭部が馬に似ていることから、漢字では「馬頭鯛」と表記される海水魚です。体の側面に弓道の的のような大きな黒丸模様があることから、「的鯛(マトダイ)」とも呼ばれます。
標準的な体長は30〜40cm程度で、大きな個体は90cm以上になることもあるようです。ヨーロッパでは高級魚として扱われており、フランスでは「Saint-pierre(サン・ピエール)」というまるでブランドの様な名前で呼ばれています。
マトウダイの旬には地域差があるものの、産卵期にあたる2〜5月が一番美味しいとされています。卵も美味な産卵期のマトウダイですが、一方で身が痩せてしまうため、晩秋から春先にかけてが一番美味しいとする見方もあるようです。
マトウダイは群れない
魚って数匹から数百匹の群れで泳いでいるイメージがありますが、マトウダイは基本的に一匹で泳いでいます。しかも比較的ゆっくり泳いでおり、回遊というよりは遊泳という言葉がピッタリです。
また、名前に鯛がつきますが、ややこしいことに鯛の仲間ではありません。薄っぺらな外見がよく似ているカワハギの仲間でもありません。ちなみに名前の由来にもなっている的のような黒斑は、警戒した際に薄くなってしまうなど、見た目通りとてもユニークな魚のようです。
全国各地の呼び名
その特徴的な外見のおかげなのか、マトウダイは全国各地で様々な呼ばれ方をしています。例えば山形県の一部地域では、横から見たマトウダイが銅鑼に見えることから「カネタタキ」と呼ばれています。
ムチのような背びれが奇抜なヘアスタイルに見えるので、「モヒカンダイ」なんてあるかなと思いましたがさすがにありませんでした。以下、各地域の呼称です。
- カネタタキ(山形県、新潟県)
- クルマダイ(富山県)
- ツキノワ(鳥取県)
- モンダイ(愛媛県)
- オオバ(山口県)
マトウダイの生息地は?日本では釣れる?
マトウダイは、オホーツク海を除く全国沿岸に広く分布しており、泥底の海域を好みます。比較的温暖な海域の魚のため、釣果が聞こえるのは本州中部から東シナ海です。成魚になると水深100〜400mの深海に生息するようになります。
ショア(陸)からの釣りで狙う場合は、浅瀬まで接岸する産卵期がおすすめです。足元から水深がある漁港であれば、マトウダイが釣れる可能性があります。どこでも釣れるという魚ではないので、情報収集をしっかり行いましょう。
関東圏では、千葉から福島にかけての太平洋側が有名です。一部地域では年末の風物詩となっており、マトウダイが釣れ始めると真冬の堤防に釣り人が所狭しと並ぶのだとか。群れない魚なので一匹釣れたからといって連発することはほぼありません。
マトウダイ釣りの方法や仕掛け方法
美味しい魚なのに、船釣りではゲスト扱いされてしまうマトウダイ。泳がせ釣りの他、オキアミを使うコマセ釣りや、エビ餌のテンヤで狙うことができるようです。
泳がせ釣り
マトウダイ釣りに最適なのが、アジやイワシを生きたまま針につける泳がせ釣りです。海底をゆっくり回遊しているので、タナは底スレスレを狙いましょう。また、馬の様に伸びた口で餌を丸呑みにするため、アタリがあっても即合わせはせず、しっかり食い込ませる必要があります。
コマセ釣り
船からの釣り方になりますが、オキアミをカゴに入れて沈めるコマセ釣りも有効です。漁港や堤防でコマセ釣りをする場合は、コマセが禁止されていないかきちんと確認しましょう。
一つテンヤ
江戸時代からある伝統的な釣法のテンヤを、より手軽に狙えるようアレンジしたものが一つテンヤです。手持ちのルアータックルを流用できることもあって、またたく間に全国に普及しました。エサはオキアミを使い、一般的には真鯛を狙う際に用いられます。
マトウダイの味や調理法
特徴的な見た目からは想像しにくいですが、マトウダイは白身魚です。その身はただ淡白なだけでなく旨味やコクがあり、肝まで絶品ときています。フランス料理で高級魚として扱われているのも納得です。
マトウダイ料理の定番はムニエルですが、お刺身でも美味しくいただけます。大きいマトウダイが手に入ったら、半身はムニエルやフライで、もう半身はお刺身やカルパッチョにするといいでしょう。
ムニエル
フレンチの定番ムニエルは、皮をパリッと焼き上げるのがポイントです。下味をしっかりめにつけてあげると、ソース等をかけなくていいので身の味をしっかり堪能することができますよ。
- マトウダイの頭、ウロコ、内蔵を取って三枚おろしにする
- まんべんなく塩コショウをしたら30分ほど置く
- キッチンペーパーで水分を拭き取り、皮に切り込みを入れる
- 身の両面に小麦粉を薄くまぶして下ごしらえは完了
- フライパンにオリーブオイルを入れ、スライスしたニンニクを弱火で熱する
- 香りが立ったらニンニクを取り出し、皮目を下にしたマトウダイの身を投入
- 中火で皮目がパリッとするまで焼いたら、ひっくり返して身を弱火でじっくり焼く
- 焼き上がったら取り出し、フライパンにバターとカットしたミニトマトを投入
- 中火で炒めながら、お好みでパセリも入れる
- 白ワインを入れ、アルコールを飛ばして乳化させたらソースの出来上がり
- マトウダイの身を盛り付け、ソースをかけたら完成
昆布締め
新鮮なマトウダイが手に入ったら、お刺身で食べないのは本当にもったいない!肝がカワハギに匹敵するほど美味しいという人もいるので、肝醤油も忘れずに作りましょう。
- マトウダイの頭、ウロコ、内蔵を取って三枚おろしにする
- 身がはっきり3つに分かれているので、線に沿って柵取りしてから皮を引く
- 軽く塩をふったら、冷蔵庫で10分ほど寝かせる
- 昆布の表面を固く絞った布巾で拭いて汚れを取る
- 布巾をお酢で湿らせ、もう一度隅々まで昆布を拭く
- マトウダイの身を冷蔵庫から取り出し、流水でさっと洗ってしっかり水気を取る
- 昆布の上に身を乗せていき、さらに昆布を被せて空気を出すようにラップで包む
- 冷蔵庫で4〜5時間寝かせる
- 肝はさっと湯通ししたあと、お酒でよく洗う
- 水気をしっかり拭き取ったら、茶こしなどを使って裏ごしする
- 寝かせた身を切り分けて、お皿に盛り付ける
- 裏ごしした肝に醤油をかけ、お皿の横に添えて完成
カルパッチョ
お刺身でも釣り美味しいマトウダイですが、ひと手間加えてカルパッチョにすればお酒のつまみに最高です。一般的な白身魚ですとドレッシングに負けてしまいますが、マトウダイなら身の旨味までしっかり感じられます。
- マトウダイの頭、ウロコ、内蔵を取って三枚おろしにする
- 身がはっきり3つに分かれているので、線に沿って柵取りしてから皮を引く
- お刺身と同様に少し薄めにスライスしてお皿に盛り付けて冷蔵庫へ
- レモン果汁大さじ1・オリーブオイル大さじ4・醤油大さじ2・塩3gをボウルでしっかり混ぜる
- 冷蔵庫からスライスしたマトウダイを取り出し、ドレッシングをかける
- お好みでミニトマトやスプラウト、ピンクペッパーをのせて完成
まとめ
マトウダイを狙う際は、エサとなるアジやイワシを同時進行で釣ることになるケースが多く、待ちの釣りでも暇になることはありません。そういった意味ではファミリーフィッシングにもおすすめですが、シーズンがほぼ真冬なので防寒対策を忘れずに。
あまり市場に出回らない魚だけに、釣り方や料理方法といった情報が多くありません。しかし、とても美味しい魚なので独特の見た目に惑わされず、めぐり会えたら思い切ってチャレンジしてみましょう。
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