みなさんはイサキという魚をご存じでしょうか? そうです、スーパーの鮮魚売り場でときおり見かけるあの魚のことです。
一見、高級魚のタイのようにも見えますが、そこまで体高はなく、色も地味でタイのような華やかさはありません。
こんな特徴がないのが特徴といえるイサキですが、じつはとても美味しい魚として知られています。人によっては脂がのった旬のイサキはタイよりもうまいといわれるほど。知る人ぞ知る釣りの人気のターゲットなのです。
今回はそんな美味しいイサキについて、生態や特徴のほか、釣り方や調理方法についてご紹介したいと思います。
この記事がきっかけとなり、イサキについて少しでも興味をもっていただけたら幸いです。
イサキってどんな魚?生態や特徴
分類:スズキ目イサキ科
イサキはスズキ目イサキ科の魚で、成魚は大きいもので40cmを超えます。体形は木の葉のような紡錘形で、体の大きさに対して頭と口が小さいのが特徴です。
体の色は、体側の上半分が黄色味がかかった暗褐色で、下半分のおなか側はいぶし銀を呈しています。
体長20cmに満たない若魚は、体側の背中側に黄褐色をした3本の縦縞があります。その姿がまるでイノシシの子供のようだと、「ウリボウ」や「イノコ」の愛称で呼ばれたりもします。
産卵期は6~8月といわれており、この時期になると水深の浅い沿岸部を目指して多くのイサキたちが集まってきます。イサキに脂がのってもっとも美味しい時期であるのと同時に、イサキがもっとも釣りやすい時期でもあります。
イサキは成長がとても遅い魚としても知られています。1年で15cmほどに成長しますが、2年目以降の成長はにぶく、30cm以上の大きさになるには6年以上かかるともいわれています。寿命は10年以上と長く、なかには20年をこえる報告例もあります。
イサキの名前の由来について
イサキの名前の由来にはいくつかの説があります。磯(イソ)にすむ魚(キ)というものや、縦縞の斑(イサ)のある魚(キ)などで、どちらもイサキという魚の特徴が名前の由来となっています。
また、イサキは別名「鶏魚(ケイギョ)」と呼ばれることがあります。これはイサキの背ビレの形がニワトリのトサカに似ているからで、英名の「Chicken grunt」(「grunt」は豚のようにブーブーと鳴く動物の意。イサキは釣りあげるとブーブーと鳴きます)も由来は同じだといわれています。
ご当地ブランド「値賀咲」
アジやサバに「関アジ」、「関サバ」といったご当地ブランドがあるように、イサキにも産地を冠したブランド名があります。その名は「値賀咲(ちかさき)」。
イサキの漁獲量日本一を誇る長崎県。そのなかでも五島列島北部にある小値賀(おぢか)島周辺は潮の流れがはやく、その潮にもまれて育った立派な天然イサキがとれることで知られています。
小値賀島の未来が明るく咲きますように! との願いを込めて名付けられたこのイサキは、すべて漁師による手釣りで一本一本丁寧に釣りあげられています。
甘さとうまみの強い値賀咲のイサキは、釣りあげたのちすぐに活締めされるため、身の締まりがとてもよく高い品質を維持したまま各地に出荷されています。
イサキの生息地は?日本では釣れる?
イサキは比較的暖かい海域にすむ魚です。日本周辺では千葉県以南の太平洋沿岸と新潟県以南の日本海沿岸、南西諸島、東シナ海、台湾沿岸など、黒潮と対馬海流が流れる地域に多く生息しています。
そしてこれら地域のなかでも特に外洋に面した岩礁地帯に好んで生息し、水深100m以浅に広く分布しています。
国内でイサキは、下図の色のついた地域で、船びき網や定置網、刺網などで多く漁獲。なかでも長崎県の漁獲量が圧倒的に多く、日本全体の3割以上を占め、2位の島根県を大きく引き離しています。
同じく色のついた地域では昔からイサキ釣りが楽しまれており、九州北部や紀伊水道、紀伊半島、伊豆半島、三浦半島、房総半島の周辺がイサキ釣りのメッカとして知られています。
イサキ釣りの方法や仕掛け方法
イサキはおもに外洋に面した沿岸の中層付近(とくに根の上など)に群れをなして生活しています。このためイサキ釣りは船を使った沖釣りが一般的ですが、産卵時期には岸寄りするため磯や堤防からの投げ釣りで狙うこともできます。
どちらの釣りも、集魚用のアミエビを入れるためのコマセカゴ(ビシ、カゴともいう)を取り付けた仕掛けが多く使用されます。
沖釣り(ビシ釣り)
イサキ釣りでもっともポピュラーなのがこの沖釣り(ビシ釣り)です。群れで泳ぐイサキたちをコマセ餌を使って集めて釣るというもので、コマセ餌を入れるためのオモリ付きのカゴ(これをビシという)を使うのが特徴です。
この釣りでは、イサキのいるタナに合わせてきちんと仕掛け(針)を落とせるかどうかがもっとも重要。タナから1mズレただけでも釣れなくなるのでとてもシビアな釣りといえます。
しかしきちんとタナを合わせることができれば、一日に20~30匹ものイサキを釣ることができるのでとてもゲーム性の高い釣りだといえます。
磯や堤防でのカゴ釣り
この釣りも沖釣り(ビシ釣り)と同じようにコマセ餌を使ってイサキを集めるところから始まります。同じポイントに、繰り返しコマセ餌を投入することが大切で、コマセ餌に寄ってきたイサキたちがポイントから離れないようにします。
しかしコマセ餌をまきすぎると、今度はイサキ以外の外道も集まってしまい釣りにならないことも。この釣りにのめり込む人たちは、これら外道をかわして狙いのイサキを釣ることに快感をおぼえます。
長年の経験と勘がものをいう世界であり、初心者には少し敷居の高い釣りだといえます。
イサキの味や調理法
白身魚のイサキは、その見た目と同じように癖がなくとてもあっさりとした味をしています。あっさりなんて書くとうまみはないの? と思われてしまうかもしれませんが、そんなことはありません。
ほどよく脂がのっており、うまみと甘さもしっかりと感じられます。お刺身や塩焼き、煮つけなど、どんな料理にもよく合う万能選手だといっていいでしょう。
イサキは6~8月の産卵期になると、脂がのってたいへん美味しくなります。とても釣りやすい時期でもあるため、沖釣りなどに出掛ければ一度に何十匹ものイサキが釣れることも珍しくありません。
もし釣りにでかけてたくさんのイサキが手に入ったら、ぜひいろいろなイサキ料理にチャレンジしてみてください。
イサキの刺身
イサキのおいしさをもっともよく感じられる食べ方が、このお刺身です。イサキの身肉はその地味な外見とは違ってきれいなピンク色をしています。皮に近い部分は鮮やかな赤色をしており、見た目がとてもきれいで食欲がそそられます。
イサキのお刺身の作り方
①ウロコを取り、包丁で頭と内臓を落としたら水でよく洗う。
②キッチンペーパーなどで水気をよく拭き取ったら、包丁で三枚におろす。
③腹骨を取ったら、包丁で皮をひく。
④包丁で中骨を落とす(この時点で片側の身肉から2つの柵ができあがります)
⑤柵に包丁を入れて自分好みの厚さに平切りし、お皿に盛り付けたら出来上がり。
イサキのひれは先端がとても鋭く危険です。調理前にキッチンバサミなどを使って切り落としてしまうと安心です。またイサキの骨は固いことで有名です。頭を切り落とすさいなど包丁の扱いにはくれぐれも注意しましょう。
イサキの塩焼き
イサキの脂のうまみを味わいたいなら、塩焼きはぜったいに外せません。火をいれる前に余計な水分をしっかりとるのがうまさの秘訣で、このひと手間をかけるかどうかで味は大きく変わってしまいます。パリパリに焼けた皮目がうまいのもイサキの特徴です。
イサキの塩焼きの作り方
①ウロコを取り、包丁でエラと内臓を落としたら水でよく洗う。
②キッチンペーパーなどで水気をよく拭き取ったら、包丁で身の厚い部分に×印の切れ目をいれる。
③身の両面とおなかの中に塩をしっかりと振る。
④イサキをキッチンペーパーで包んだら、冷蔵庫に入れて30分ほど寝かせる(こうすることで余計な水分がとれてイサキの味が凝縮します)。
⑤キッチンペーパーを取り去ったら、ヒレの部分に粗塩をたっぷりと擦りつける(こうすることでヒレが焦げ付かずきれいに焼き上がります)。
⑥魚焼きグリルで両面がこんがりするまで焼き上げる。
⑦半分に切ったスダチやレモンを添えて、お皿に盛り付けたら出来上がり。
イサキの煮つけ
癖がなくあっさりとした味わいのイサキは、煮つけ料理との相性も抜群です。塩焼きと同様、イサキの煮つけも火をとおす前の下準備がとても大切。ウロコやヌメリ、余計な水分をしっかり取り除いてやることでおいしさが格段にあがります。
イサキの煮つけの作り方
①ウロコを取り、包丁でエラと内臓、ヒレを落としたら水でよく洗う(血あいは臭みの原因になるのでしっかりと取り除く)。
②キッチンペーパーで水気をよく拭き取ったら、皮目の部分に包丁で×印の切れ目をいれる。
③沸騰したお湯を用意して、その中にイサキを10秒ほどくぐらせたら、そのあとすぐに水で冷やす。
④イサキを水のなかでやさしくなで、取り切れなかったウロコやヌメリを洗い落とす(こうすることで魚の臭みがとれる)。
⑤小さなイサキはそのままでもいいが、大きな場合は鍋の大きさに合わせて二等分あるいは三等分に切り分ける。
⑥煮物用の鍋に、水50ml、酒100ml、みりん100ml、しょうゆ100ml、砂糖大さじ2 これらすべてを入れ軽くかき混ぜる(このとき好みで細く刻んだショウガを入れてもよい)。
⑦鍋のなかに切ったイサキを重ならないように並べたら火にかける。
⑧沸騰してきたら火を弱め、落し蓋をかけて10分ほど中火でコトコト煮る。
⑨落し蓋をとったら少し火を強め、スプーンで魚に煮汁をかけながらさらに煮詰めていく。
⑩煮汁が半分以下になり、とろみがついてきたら火を止めて出来上がり。
まとめ
今回は海釣りの人気ターゲットのひとつであるイサキについて、生態と特徴、生息地のほか、釣り方や調理法を紹介させていただきました。
イサキについて少しだけ興味が湧いたのではないでしょうか。
最近のイサキ釣り(船釣り)は、手ぶらで出かけても釣りが楽しめるというのが常識になりつつあります。事前に船宿に知らせておけば、釣り竿や仕掛けなどすべてレンタルが可能なことがほとんど。
釣りをしている最中も常に船長が面倒をみてくれるので、旬の時期であれば初心者であっても釣果は約束されたのも同然です。
食べておいしいイサキ釣り、ぜひ一度挑戦してみてください。おすすめですよ!
コメント